お酒を飲むと気持ちよくなるのはなぜか。東京アルコール医療総合センター・センター長で医師の垣渕洋一さんは「アルコールは少量でも効率よくドーパミンの分泌を促し、気分を良くする。それにつられて飲んでいるうちに、多量飲酒が習慣化してしまう」という――。

※本稿は、垣渕洋一『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

暗い部屋で一人ワインを飲んでいる女性
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

酒を飲むとハイになるのは脳内物質の作用

人は、なぜお酒を飲むのでしょうか。

「飲むと、とにかく気分がいい」
「緊張がゆるんでリラックスできる」
「高揚して、楽しくコミュニケーションできる」

これらは、多くの人が最初に感じるお酒の魅力ではないでしょうか。

なんといっても、人類とアルコールは古代エジプト時代からの長いおつき合いですから、相応の魅力があることはたしかです。また長いおつき合いだからこそ、メリットとデメリットの両面が古くから知られ、治療と研究の歴史もとても長いのです。

まずお酒を飲むことのメリットについて。「気分がいい、楽しい」という言葉が示す通り、お酒は短期的には脳に対する「万能の向精神薬」のように働きます。飲むと“ハイ”になるのは、脳内で生み出されるドーパミンやセロトニンなどの「気持ちよくなる物質」の薬理作用です。