コロナワクチン治験を拒否した6歳の女の子

「同意」の教育の重要性を感じた場面がコロナ禍で身近なところにありました。

息子たちの友人に、新型コロナワクチンの子どもの治験に参加した子が数人いるのですが、この治験においては、一つひとつの手技に関して、親と子ども双方への説明と双方からの同意が必要で、まさに子ども自身の同意が求められたのです。

息子の友人の一人に、親は治験に同意したものの、“This is my body and I don't give permission.”(私の身体は私のもので、治験には同意しない)と治験の中での注射を拒否した6歳の女の子のケースもありました。

その際、治験スタッフも「わかりました。では、また考えが変わったらいらしてください」と6歳の子どもの同意を得られなかったことに対しても決断を尊重した対応をし、その後親子で話し合った結果、翌週には治験に参加し、ワクチン(かプラセボ=偽薬)を接種したそうです。

「親と子どもは独立した個人」という認識がある

親の同意だけでなく、子どもの同意が医療行為においても尊重されていることについては、少し文化的な背景の説明が必要かもしれません。

アメリカで医師が子どもの患者さんに同意を得る際、もちろん法的には保護者からの同意が必要ですが、診療や治療方針について子どもに直接説明することが通常です。そして子どもから同意がすぐに得られない場合は、家族での話し合いを経て納得できる決断をしてもらうことを、子どもの患者さんに接する私自身も診療で心がけています(医学的に緊急性のある場合はこの限りではありません)。

アメリカでは、日常生活のあらゆる場面で、親と子どもが独立した個人(individual)であるという認識があると感じます。もちろん子どもに全ての判断を任せるわけにはいかない場面も多いので、親子の衝突は存在します。

しかし、子どもが親と違う意見を持ったときにも、子どもの意見は子どもの意見としていったん受け止め、もし結果的に子どもの選択が良くない方向に向かっても、失敗に自身で対応することも子どもの人生の一部だと考える親も多いのです。

また、最終的に親の意見を子どもに聞き入れてもらう場合であっても、どうしてそのような意見を持つのかを親子の間で話し合う姿勢が中心にあると感じています。