女海賊ドーラは宮﨑駿の母親がモデル

『ラピュタ』における新要素としては、海賊の女親分、ドーラの造型がある。ドーラについては『アニメージュ』1985年12月号に編集部の原稿として、こんな記事が載っている。

海賊にして母、物欲と食欲の人・ドーラこそ宮﨑さんの思い入れのいちばん深い人。なにしろ宮﨑さんのお母さんがモデルなのだから。子どものころは「兄弟男ばかり4人そろってもおふくろにはたちうちできなかった」そうです。「想像力がかきたてられる」と音響監督の斯波さんをうならせ、金田さんに「描いてみたい」といわせた魅力ある“バアさん”です。

宮﨑の母は、『ナウシカ』制作中の1983年に亡くなっている。宮﨑の弟である宮崎至朗が、『映画 天空の城ラピュタ GUIDE BOOK』に寄稿した「兄・宮崎駿」の中には次のように書かれている。

母親は昭和五十八年七月二十七日に七十一歳で他界した。「ラピュタ」に登場する女海賊ドーラを連想してくれるといい。病気がちだったので、あの肉体的活発さはなかったし、もう少し美人だったと信じたいが、精神的迫力はまさにドーラに通ずるものがあった。
『天空の城ラピュタ』の場面写真
© 1986 Studio Ghibli

「宝をもって帰ってメデタシ」ではない

音響面では音響監督を引き続き斯波重治が、音楽を久石譲が担当した。主役の2人の声は、横沢啓子と田中真弓が担当。異色キャストとしては、俳優の寺田農がアフレコに初挑戦し、ムスカというキャラクターを印象的に演じた。また音響面では、モノラルだった『ナウシカ』に対し、『天空の城ラピュタ』よりドルビーステレオが採用された。

エンディングに主題歌「君をのせて」を入れるというのは高畑のアイデア。この主題歌作業について高畑は、『ロマンアルバム 天空の城ラピュタ』のインタビューで次のように語っている。

この話は一種の宝島としてのラピュタへ行くわけですが、別に宝をもって帰ってメデタシというわけではない。一種の暗い側面もあるこの物語を見終って、観客が「ホーッ」と茫然となっているところに、歌がスッとすべりこんできて、何か気持ちを柔らげ、しかも歌を聞いている間にあれこれ頭の中で映画を反芻はんすうしてくれる……勇気が湧いてくる……そのためにも、歌があった方がいいんじゃないかと思ったんです。宝を求めて行ったんだけれど、宝は手に入らなかった。かわりに何を手に入れたんだろう……そのあたりのことですね。

そこで高畑はイメージ・アルバムの中の「パズーとシータ」という曲を映画の中で一貫して使い、最後に歌にしてそれを流すという音楽演出を提案。久石は歌にするためにサビ部分を追加で作曲し、宮﨑は主題歌の内容についてメモを書いた。この宮﨑のメモの言葉がそのまま歌詞になりそうだと高畑は考え、久石と高畑で言葉を整理し曲に合わせることで主題歌「君をのせて」が完成した。

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