6月21日に会期末を迎える国会最終盤で、岸田家による権力私物化・公私混同は最大の焦点に浮上してきた。

単に岸田一族が首相公邸で大ハシャギしたという問題にとどまらず、首相が自らの責任を回避するために国会で自らの関与を隠す「ウソ」を発言し(「虚偽答弁」と断定できなくても「はぐらかした」とは言えるだろう)、息子に全責任を負わせようとした姑息こそくな姿勢が問われるのだ。内閣支持率は続落する可能性が高い。

今解散しても維新を勝たせるだけ

支持率低迷にあえぐ立憲民主党には、国会終盤に内閣不信任案を提出することへのためらいが強かった。岸田首相に6月解散の大義を与え、総選挙を誘発して大惨敗を喫しかねないからだ。

ところが、大忘年会騒動のおかげで内閣支持率が急落したため、解散におびえることなく内閣不信任案を出しやすくなった。むしろ岸田首相が不信任案に対抗して衆院解散を断行することに躊躇する政治状況に立場が入れ替わったのである。

岸田首相が6月解散・7月総選挙を断行する最大のメリットは「内閣支持率が高く、今なら確実に勝てる」ことだった。支持率急落でメリットは吹き飛んだ。

そもそも7月総選挙には、野党第1党の立憲を打ち負かしても、野党第2党の維新を躍進させ、立憲以上に強力な野党第1党の誕生を後押しするリスクがあった。内閣支持率が急落するなかで無理やり総選挙に突入すれば、大量の政権批判票が維新になだれ込む可能性が高まるだろう。

自民党は公明党との選挙協力を固めつつ、立憲と維新を競わせて野党を分断することで国政選挙で連戦戦勝してきた。立憲が壊滅的に敗北し、維新が歴史的な躍進を遂げれば、野党間のバランスが崩れ、立憲の多くは維新に駆け込み、政界地図は大きく塗り変わる。

「そもそも岸田首相は6月解散に前向きではなかった」

岸田首相が率いる宏池会(岸田派)は、財務省を介して野田佳彦元首相ら立憲幹部とのパイプはあるものの、維新との縁は薄い。むしろ維新と親密な関係を築いてきたのは、岸田首相の最大の政敵である菅前首相だ。「立憲崩壊・維新台頭」は自民党内の力学では岸田首相に不利に働く。

岸田首相にとってもうひとつの6月解散のデメリットは、来年秋の自民党総裁選まで1年以上あることだ。総裁選前に解散を断行する意義は、総選挙に勝利した勢いで総裁選を無投票で乗り切ることにあるのだが、いま総選挙で圧勝しても、その効力が1年以上続く保証はない。