健康診断は、実は結構いい加減なもの

また、福間さんらは、2022年に発表された研究(※3)でも界隈かいわいをザワつかせました。というのも、メタボ健診が今のように国を挙げて推進されるのは、生活習慣病を防ぐことで、医療機関の受診が減り、医療費の削減につながると期待されたから。

その効果を検証するため、約5万人を調査。その結果、メタボ健診により受診率は低下したものの、医療費抑制効果は認められませんでした。福間さんらは「費用が高額(年間約160億円)であることを考慮し、そのシステムを再評価する必要がある」としています。

もともと、いわゆる生活習慣病や、心臓病や脳卒中を防ぐために始まったメタボ健診。認知度が高いわりに、実は効果に乏しいとはっきりしたことは驚きでした。

メタボ健診の例からわかるのは、健康診断というのが、実は結構いい加減なものであるということ。

他にもつい最近(2022年11月)、国内の栄養学のトップである国立医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)らが有名誌『Science』で発表した研究(※4)では、こんなことが明らかになっています。実は、成人では1日で体の全水分の10%が失われており、最低でも1日1.8リットルの水分が必要。失われる水分量を正確に突き止めた世界でも珍しい研究でした。

それでも健康診断は受けたほうがいいワケ

ここで、私の体重などの条件で4リットル=4キロだとすると、健康診断を朝に受けた場合と午後に受けた場合で、水分量の違いだけで体重に数キロの差が生じ得ることに。1年に1回というスパンなのに、このように、一発勝負なのも頭が痛いところです。

では、健康診断はただ面倒で、結構いい加減な、意味のないイベントなのかと言えば、それは違います。

考えてみてください。こんなにもポジティブな要素がないのに、1年に一度、面倒でも健康診断を受けるという習慣は、国民的に根づいているのです。他の何が続かない人でも、年に1回以上の健康診断は受けている、これはすごいことだと思いませんか。

患者は、医師の診察室の待合室でソファで順番を待っています。
写真=iStock.com/kokouu
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私は、このほど上梓した『健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本 1日3秒から始める、挫折しない20日間プログラム』(KADOKAWA)のまえがきで、健康になるにはルーティン、すなわち習慣が必要だと強調しています。だとすると、健康診断はある意味で、すでに最強のルーティンなのです。