「コミュ力低そう」「お金がなさそう」

医師全体で見ると、0.6%しかいません。文部科学省によると、主な医学部の2023年度入学定員は、順天堂大学が140人、東京医科大学が122人、日本医科大学が125人、北里大学が125人、関西医科大学が127人、近畿大学が112人となっています。ざっくり見て、1つの大学の定員が100人ちょっとですから、この中で病理医になる学生は1学年に1人いるかいないかということになります。

これだけ少ないと業界内でも偏見をもたれることが多く、他の科の医師から「病理医は変わった人が多いよね」なんて言われることもあります。

彼らに言わせると、病理はちょっと変わっている、あまり社会慣れしていない、コミュニケーションが取りづらい、すぐ怒るといったようなイメージがあるようです。

少し前の調査ですが、日経メディカルカデットが2013年に行った診療科のイメージに関するアンケートでは、病理医は他の科から「コミュニケーション能力が低そう」「影が薄い」「お金がなさそう」といった声が寄せられていました。

そうした声はSNS上でも目にすることがありました。過去にある医大生が病理医を「キモい」とツイートし、病理医(のごく一部)が騒然となったことがありました。

「キモい」と心の中で思うのは自由ですし、それを止める権利は誰にもありませんが、その思いを言葉にしてネット空間に発信するのは別の話です。せいぜい飲み会などの場で、仲間内で言いあうくらいにとどめておいたほうがいいでしょう。

病理医と他の科の医師との違いはなにか

病理医と他の科の医師の違いはいくつもありますが、一番わかりやすいのは服装です。病理医は、病理外来のときを除いて患者さんに会うことが基本的にはありません。それもあってか、白衣というものを着ない人も多いのです。

もちろん、臓器を切って顕微鏡で見る部位を取り出す「切り出し」のときは、服が汚れるのを防ぐために白衣になりますが、そうでないときは全く着ない人もいます。

反対にユニフォームのように常に白衣姿という病理医もおり、ある病院で血液が付着している白衣を着て院内を歩いて、患者さんに不快だと投書された医師がいました。名指しはされていませんし、患者さんもその医師の専門が何かを知らなかったはずですが、私は個人的に「それは病理医かもな」と思ったものです。以来、院内を白衣で歩くことを私自身は自粛しています。