歩きスマホなど、公共の場で周りの人の迷惑になるマナー違反の行為をしている人に出会ったとき、どんな風に対応すればいいのか。漫画家の田房永子さんは「自分の進路を妨害していたり、明らかに事故につながりそうな危険な場面以外は、気にしないようにしている。注意する時には、なるべく相手を刺激しないような言動で『私はとても迷惑している』と、主語を自分にした“アイ(I)メッセージ”で伝えるといいのではないか」という――。
渋谷で出会った「チョップおじさん」
まだコロナ禍になる前、渋谷駅の雑踏で、人のスマホをチョップで叩き落としているおじさんを目撃しました。
縦横無尽に人々が行き交う中、歩きスマホをしている20代前半くらいの女性。その真正面にいたおじさんが女性をしっかりと見下ろしながら、女性の持っているスマホに自分の手を振り下ろす形で当て、パーンとスマホが下に落ちていました。
人混みの中で、手が当たってしまうことはあると思います。でもおじさんはキッチリと女性を見ていたので違和感がありました。頭に当てた手を下ろしたテイを“装ってる”感じがしました。
あのチョップはやはり「わざと」だったのだろう。そう確信したのは、歩きスマホの若い女性に同じことをしている別のおじさんを、同じく渋谷の雑踏で見たからです。
目の前にいる若い女の子をじっと見ながら、ちょうどいいタイミングで手を下ろしてそのスマホをチョップで落としていました。
女の子のほうは、人に当たってしまって落ちてしまった、すみません、という感じで慌てて拾っていました。一瞬の出来事だけど、横から見ていた私には、おじさんが狙いを定めているのが分かり、えええ~~と思いました。
チョップおじさんは、「制裁」とか「注意喚起」としてチョップをしているのではないか?
おじさんがわざとやっているかどうかなんて私にはなんの証拠もない。ですけども、おじさんが「無」のまま立ち去るのが不自然でした。
もし自分の手が他人の持ち物に当たって落としてしまったら、「すみません!」と当たった側が拾おうと動いてもおかしくない。だけどおじさんたちは2人とも、慌ててスマホを拾う女の子を見ながらも無表情、無動作、無言でした。