(2)歴史から問い直す

 歴史に学ぶことは、過去にしばられることではありません。歴史を知ることで、世の中の見方が一変することがあります。

日本の春を象徴する一面の桜。でも、そうした感覚や光景は近代以降につくり上げられたもので、そこには植木屋のマーケティングも――。『桜が創った「日本」』はこの経緯を丹念に追い、「当たり前」が人の一生ほどの期間で変化する現実を示します。

一方『日本型マーケティングの革新』は、典型的な日本企業の製品ライン構成や営業行動が、戦後日本の歴史的条件の産物であったことを教えてくれます。

(3)戦略眼を高める

戦略やマネジメントの要諦は、さまざまな打ち手の優先順位を見定め、ボタンのかけ違いを起こさないことです。戦略的な発想やマネジメントの視点を併せ持たなければ、打ち手のアイデアは思いつきの域にとどまってしまいます。『マネジメント』は、企業の戦略やマネジメントを学ぶうえでの古典です。一方、今の日本企業の経営やマーケティングに即した事例や分析で学びたいという方には、『経営戦略を問いなおす』や『仮説思考』をお勧めします。

(4)社会の「今」に潜む論理を読み解く

市場あるいは社会では、今この瞬間にも新しい現実が誕生しています。肌で感じる変化をいち早く言葉や形にする。そのための方法論を磨くこともマーケターには必要です。『ブランドが神話になる日』は、米国の社会や文化の変化をブランディングに巧みに活かしてきた米企業の姿を描きます。一方、『マーケティング優良企業の条件』と『競争的共創論』は、日本企業に生じている新しいマーケティングのモデルを描きます。もやもやとした「今」の消費やマーケティングの構造を見定める手がかりとなる3冊です。

(5)マーケティングの原点を考える

迷走を防ぐには、原点から目を離さないことも大切です。マーケティングを生んだ米国の歴史の文脈を知るには『アメリカ人』がよいでしょう。「マーケティングの原点はこんなところにあったか!」と、膝を打つ場面も多いはずです。

一方『少女パレアナ』は、マーケティング発想の原点は案外こんなところにあるのでは、という本。物事に潜む喜びを発掘する「喜ぶゲーム」は、マーケティングの原点にも通じるように思えます。