今回の一件から考えておきたいこと
よく考えてみてほしい。
もしも本州におけるアリモドキゾウムシの発生に、安易な気持ちで行われたネット売買が関係しているのであれば、とても残念なことだ。
港や空港などで海外からの持ち込みを水際で懸命に防ぐ国の職員、また現場で必死に防除作業にあたっている地方自治体の職員の方々がいる。その努力はすべて僕たちの税金に支えられ、成り立っている。
さらに、精魂込めて丹念に育てたイモを廃棄しなくてはならない農家の無念さはいかばかりだろうか。
移動禁止植物のアプリ出品が見つかると、もちろん罰金が科されることもある。けれどもそれ以前に、いったん害虫の侵入を許すと、どれだけ現場の関係者の時間を奪うことになるのか、想像してほしい。
一方で、サービスを提供する側にも規制などの措置が必要になる可能性もある。
「人の流れ」「モノの流れ」を見直そう
今回のアリモドキゾウムシの発生原因は現在「調査中」だろう。だが物流の発達、インバウンド、温暖化などの要因により、これまでは南方地域にしか生息していなかった外来種が、わが国に突如として現れるリスクが明らかに高まっていることは間違いない。
今回の出来事は、人の流れ、モノの流れをいま一度見直す機会を与えてくれているのかもしれない。
ネット販売などに気軽に違法品を出品してしまう安易な行動が環境を狂わせ、生態系をも攪乱する脅威はあるのだ。そしてなんといっても、現場の最前線で、昼夜を惜しまず病害虫の駆逐作業にあたっている方々に思いを馳せてほしい。
日本が誇る「焼きいも」を世界中で愛されるブランドにするために。
■参考文献
*1 農林水産省サイトより https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/siryou-3.pdf
*2 『不妊虫放飼法 侵入害虫根絶の技術』伊藤嘉昭編(2008)海游舎
*3 Akazawa et al. 1960. Arch. Biochem. Biophys. 88, 150-156
*4 農林水産省サイトより https://www.maff.go.jp/pps/j/information/kinkyuboujo/arimodoki.html
*5 「鹿児島県指宿市におけるイモゾウムシおよびアリモドキゾウムシの緊急防除と根絶」農林水産省門司植物防疫所(2012)植物防疫 66:350-351
*6 農林水産省サイトより https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/arimodoki.html/attach/pdf/arimodoki-3.pdf
*7 Himuro et al. 2022 PLOS ONE
*8 Ikegawa et al. 2022 J. Appl. Entomol. 146, 850-859