サツマイモを“ゴミ”にしてしまう怖い虫

アリモドキゾウムシは、世界の熱帯・亜熱帯におけるサツマイモの大害虫で、わが国では1903年に沖縄本島で初めて見つかっている。その後、南は宮古・八重山諸島、北は奄美諸島、小笠原諸島に侵入し、またたく間に定着し蔓延まんえんした(2)

その幼虫がイモの中に侵入して食い進む。虫や菌によって傷を受けたサツマイモは、自らイポメアマロンという強烈な苦み物質を出す(3)

ゾウムシの被害を受けたイモはとても苦くて食えたものではない。家畜の餌としても使われるサツマイモだが、苦み物質を放出したイモは豚の飼料としてさえ使えない。

性フェロモントラップでモニタリング

アリモドキゾウムシは南西諸島に蔓延しているが、基本、屋久島以北には定着を許していない。

これまで屋久島、鹿児島市、室戸市(高知県)などに数匹が侵入した事例はある(2)。しかしその都度、国と地方自治体の職員が懸命の駆除作業を行い、侵入地に多量の誘引剤と農薬を散布して対応した。

発見地から半径2キロの範囲内にゾウムシのオスを強く誘引する「性フェロモントラップ」を仕掛け、ゾウムシがさらに分散していないか徹底的なモニタリングを行い、発生地に自生する寄主植物であるノアサガオやサツマイモなどヒルガオ科植物をすべて除去する完璧な初動防除を行ったのだ。

アリモドキゾウムシの性フェロモントラップ
筆者提供
アリモドキゾウムシの性フェロモントラップ

これが功を奏し、各地で侵入のたびに根絶に成功している。

しかし温暖化の進む日本のハウス栽培地帯で、このゾウムシは越冬できる可能性がある。いったん広範囲に蔓延を許してしまえば、根絶は不可能に近いほど難しい。そうなると、日本の甘藷かんしょ栽培は大打撃を受けるだろう。