徹底駆除のうえ、「1年間栽培禁止」の厳しい措置

昨年、浜松での発見によって衝撃を受け、日本のサツマイモ栽培に強い危機感を抱いた農林水産省は、2023年2月17日に緊急防除の省令、つまり大臣命令を発した(4)

3月19日以降、ゾウムシの発生地から半径1キロ以内はサツマイモやノアサガオなどのヒルガオ科植物のすべてを廃棄させ、栽培も禁止し、さらに発生地からの移動を禁止する、という措置だ。

さっそく、3月20日付の中日新聞Web版では、発生地区での「サツマイモ栽培1年禁止」として報じ、農家は死活問題だ、と書いた。

国と自治体は、すぐに発生地に性フェロモンの罠をたくさん仕掛けてモニタリングし、さらに地区内のサツマイモを含むヒルガオ科植物の徹底的な除去を行った。これらの初動防除により、12月以降は罠にかかるゾウムシは見つかっていない。

だが、寒い冬のあいだは虫が活発でなくなるため、フェロモンに誘引されにくい。気温の上昇する今年の春先から夏秋にかけて、ゾウムシの発生を見届けなくてはならないだろう。そのための1年間栽培禁止という厳しい措置である。

ゾウムシのダメージを受けたサツマイモ
写真=iStock.com/piyaset
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モニタリングトラップがない「イモゾウムシ」もいる

今回より規模は小さいが、2006年の秋に指宿いぶすき市(鹿児島県)でも侵入はあった。同年9月8日までに24匹のゾウムシが見つかったのだ。

指宿でやっかいだったのは、アリモドキゾウムシに加え、2008年の11月にイモゾウムシも見つかったことだ。イモゾウムシもサツマイモの塊根かいこんに幼虫が食い進み、同様の被害をサツマイモに与える。

これを受けて農水省は、今回の浜松と同じ緊急防除措置に踏み切った。2009年8月のことだ。

イモゾウムシについては、誘引のできる性フェロモンも開発されておらず、いったん侵入を許せば、どこにひそんでいるのか、そのモニタリングすら難しいのが現状だ。