“サツマイモ”が熱い。品種改良が進んでおいしくなり、さらに焼きいも専門店が「冷やし焼きいも」「焼きいもパフェ」といったメニューを開発。1年を通して楽しめるようになったことで、第4次ともいわれるブームに火がついた。ところが、進化生物学者の宮竹貴久さんは「じつは、肝心のサツマイモの栽培に危機が迫っています。この事実はもっと広く知られてほしい」という──。
日本発「焼きいも」ブームが世界を席巻…
「焼きいも」がいま、空前のブームになっている。しかし、その焼きいもが日本で食べられなくなるかもしれない、と言ったら驚くだろうか。
焼きいもブームが加速したのは、ここ3~4年のことだろう。サツマイモは品種改良が進み、甘い、甘い焼きいもが売れっ子となった。都内でも専門店が次々出店している。
国内だけではない。サツマイモはいまやシンガポール、香港、台湾、マレーシア、タイなど、東南アジアのみならず、欧米諸国でも「日本で品種改良されたサツマイモは、とくにとても甘くておいしい」と、すごい人気だという。
九州、四国、本州の生産地でイモを作る農家の士気は上がるばかりだ。サツマイモ輸出で年商20億円という記事も見かける。コロナ禍が明けた今、農林水産省もサツマイモの海外輸出戦略に力を入れている(1)。
「いないはず」の害虫が静岡県で発見される
そんな矢先、空前絶後のサツマイモブームに水を差しかねない事態が起きた。
2022年10月28日、静岡県が「アリモドキゾウムシの県内初確認について」というプレスリリースを出したのだ。翌週31日には、中日新聞がWeb版で「サツマイモ害虫、県内で初の確認 アリモドキゾウムシ」という記事を掲載した。浜松市の農産物販売店でゾウムシが見つかり、市内の一部地域に分散したようだ。
僕はかつて、南西諸島でこのゾウムシの根絶事業に携わった経験がある。そんな僕も含め、全国の関係者がこの報道に大きな衝撃を受けた。
南方からの侵入を警戒していた九州ではなく、いきなり東海地方で“いないはず”のサツマイモの大害虫が見つかったのである。