「一度死んだと思えば、なんでもできる」
身近なところでいいますと、私の母は、まさに絶望を希望に変えて、ある種の奇跡のようなものを起こしてくれました。5年ほど前に受けた健康診断でステージ3の大腸がんが見つかり、医師に次のように言われました。
「転移している可能性がありますし、ご年齢がご年齢ですので、仮に手術で切除できたとしても、歩けなくなるかもしれません」
このとき母は82歳。歩けなくなるリスクを冒して手術に踏み切るか。それとも、手術をせずに治療しながら、残りの人生をまっとうするか。大きな決断を迫られました。
「切れと言われたら切ります。でも、転移が見つかれば、再手術が必要です。体力的なことを考えると、手術はしないほうがいいかもしれません」
これが医師の見解でした。
しかし母は、「一度死んだと思えば、なんでもできる」と、リスクを承知で手術することを選んだのです。近いうちに死が訪れたら仕方がないという「諦め」を受け入れ、開き直れたからこそ、思いきった決断を下せたのでしょう。
そして、母は“賭け”に勝ちました。手術は成功し、転移も認められず、つらいリハビリを乗り超えて、もとの生活を取り戻すことができたのです。あれから5年以上が経ちましたが、今も元気に歩きまわっています。
絶望からしか生まれない希望もある
人間、最終的にどうなるのかなんて、誰にもわかりません。
だからこそ、自分の人生は自分で選択して、悔いのないよう生きましょう。
もし母が歩けなくなっていたり、がんが転移していたりして、状態が急速に悪くなったとしても、自分で決めた結果であれば、きっと後悔なく旅立つことができていたと思います。
大事なのは、絶望したときに腹をくくることです。
「絶望したときこそ落ち着かなきゃダメだ。自分を見つめ直し、最善の道を見つけていく。それしかない。焦って、迷って、おたおたして、自分を見失うのは愚か者のすること。死ぬと決まったのにこれ以上暗くなる必要はあるか? どうせ死ぬんだから、それまで精一杯明るくやっていこうじゃないか」
ブッダの教えを“超訳”するとこうなります。
絶望からしか生まれない希望もある。
このことを、ぜひとも忘れないようにしていただきたいと思います。