ウクライナで核を使えないワケ

【小泉】でも、2022年9月にロシア軍がハルキウでボロ負けしたときにロシアが核を使わなかったのを見て、やはり簡単に核は使えないな、という感じもしました。

2022年3月3日、ウクライナ・ハルキウの路上の建物を破壊
2022年3月3日、攻撃を受けたウクライナ・ハルキウの建物(写真=YuriiKochubey/Depositphotos.com

通常戦力で敗北して、敵がドカドカ攻めてくるときこそが戦術核の使い道なはずなのに、戦場で使って敵の野戦軍を阻止するのも、脅しのための核使用も、プーチンは結局できなかったのです。

手段はあるし研究もしていたし、訓練では何回もやっているといわれているのにできなかった。ハルキウの敗北は第2次世界大戦後にロシアが喫した最大の軍事的敗北であるにもかかわらず、です。

やはり核を使った場合、どこまで事態が転がっていくかというエスカレーションの予測可能性があまりにも低いので、よほどのことがなければ使えないんだと思いました。

想定外の苦戦

【小泉】ではよほどのこととは何かという話ですが、これまでロシアが想定してきた危機と今ウクライナで起きていることの間には微妙なズレがあるんです。

ロシアの将軍たちにとって、ウクライナやジョージアといった旧ソ連の国はロシアの通常戦力で簡単にやっつけられる相手だったんです。

多田将『核兵器入門』(星海社新書)
多田将『核兵器入門』(星海社新書)

しかしそこにアメリカが入ってきたら勝てないので、その際に核を限定使用するという考えだったんですよ。この時点でアメリカとの戦争が始まっている、あるいは差し迫っている、もしくは第3次世界大戦が通常兵器によって始まってしまったというような危機のステージがきわめて高い段階なので、核の使用を本気で考えてもおかしくないというロジックでした。

ところが今回ロシアは、アメリカが直接関与してくる前の、ウクライナの通常戦力にさえ勝てなかったということです。なので核を使うかどうかといったら「いや、さすがにまだ第3次世界大戦になっていないのに」という話になってしまうから余計に使いにくいんだろうと感じます。

ロシアの自己イメージと実際の実力にギャップがあるんでしょう。

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