だから苦悩がどんどん大きくなる…ブッダが説く「心を蝕む3つの毒」

「我」「慢」などの本能から生じる感情。これを仏教では「煩悩」と呼びます。そして、この煩悩が私たちにネガティブな感情をもたらすわけですが、ここではそれを促進する3つの要素について説明していきましょう。

ものごとを良い方向に促してくれるものの代表例として薬を挙げるとするならば、この3つは真逆の働きをしますので、毒とお考えください。いや、毒というより猛毒と表現したほうが適切かもしれません。

ブッダはこの3つの要素に対して「とん」「じん」「」という名前を与え、人間の肉体と精神、ひいては人生を台無しにしてしまう「三毒」と位置づけました。

スムーズに苦悩を手放していくためには、この貪瞋痴のしくみを理解し、自分のことを冷静に見つめていく必要があります。原因を知らなければ、対処もままならないというわけです。

「貪」「瞋」「痴」が人生を台無しにする

【「貪」は「欲」のこと】

「なにかがほしい」「なにかを求めていきたい」「好きなものに近寄っていきたい、自分に近づけたい」と願う衝動、すなわちエネルギーとお考えください。好きな人であったり、お金であったり、物品であったり、社会的地位であったりと、あらゆるものが対象になります。対象が磁石のS極であったら、自分は全力でN極になりたいと思う――そういう欲求が「貪」です。

【「瞋」は「怒り」のこと】

「貪」と反対に、「嫌いなものを自分から遠ざけたい、引き離したい」と望むエネルギー。対象が磁石のS極なら自分もS極に、向こうがN極なら自分もN極になりたいと思う感情が「瞋」です。嫌いだから遠ざけたい。でも、遠ざけられない。だから、怒る。その流れをイメージするとわかりやすいでしょう。

【「痴」は「無知」のこと】

智慧がないためにどうしていいかがわからず、心身ともに不安定になってしまう。あるいは、智慧がないために愚かな行為に走ってしまう。そんな心境と捉えてください。「貪」「瞋」のところで取り上げたエネルギーに例えると、行き場を失ってぐるぐる回っているような状態です。

3大煩悩が生み出す負のサイクル

この貪瞋痴は、それぞれの性格こそ異なるものの、じつは密接にかかわり合っています。

「欲(貪)」が満たされないから、「怒り(瞋)」が生まれる。
「怒り(瞋)」が発生しても「無知(痴)」ゆえに鎮め方がわからない。
「無知(痴)」で現実や自分の本質を理解できていないため、新たな「欲(貪)」が生まれる。

絶えずこれをくり返しているのです。