リスクが下がるとリスクの高い行動をとる
こうした間違ったリスク評価は、その後の行動にも影響を与えることがあります。
たとえば、道を広げたりガードレールをつけたりと、事故を防ぐために道路が整備されれば、当然、事故も減ると思うでしょう。
しかし実際には、道路を整備しても思ったほど交通事故が減らないケースがしばしば見られます。それは、ドライバーが以前よりもスピードを出すなど、より危険な運転をするようになるからです。
人は身の周りのリスクが低下したと感じると、その分だけ、リスクの高い行動をとることがあります。これを「リスク補償」と言います。安全性が高まったはずなのに、事故が減らないことの背景には、このような理由があります。
タバコを低タールのものに変えると、以前より喫煙本数が増えるのも、このリスク補償の一例と言えます。
「安全かも」と思うときこそ危ない
「リスク補償」は、慣れや訓練によって自らの手でリスクをコントロールできる力が身についた、と思う場合にも生じます。
たとえば、運転免許を取ったばかりの頃は安全運転を心がけていても、運転に慣れてくると、制限速度以上のスピードを出したり、無理な追い越しをしたりするようになります。
リスクがあるとわかっていながらもリスクを追求することを、「リスクテイキング」と言い、個人差があることが知られています。リスクテイキングしやすい人と、しにくい人がいるということです。
また、「若気のいたり」という言葉があるように、一般に若い人は中高年よりも、リスクテイキングの傾向が強いようです。