人は「自分が知っていることは、他の人も知っている」と思い込みがちです。他の人も自分と同じように考えたり、感じたり、行動したりするだろうと過大に見積もる傾向があるからです。こうした「自分の常識はみんなの常識」「自分は一般的」というバイアスには誰もが囚われていますが、ときに人を傷つけたりトラブルの原因になるので注意が必要です――。

※本稿は、『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

なぜ自分の評価を見誤ってしまうのか?

日常生活の中では、誰もが無意識のうちに直感や経験、先入観、願望などに囚われています。その結果、合理的でない選択や判断を下していたりします。

心理学ではこれを「認知バイアス」と言い、こうした思い込みや思考の偏りに誰もが縛られているのです。

認知バイアスは日常生活のあらゆる場面に潜んでいて、科学的に実証されているものは200種類以上あるとも言われています。

記憶や選択、信念、因果、真偽などに関連する場合に認知バイアスは生じやすいのですが、非合理的な判断をしてしまった結果、「あのとき、他の方法を選べばよかった」「なぜ判断を間違えてしまったのか」と後悔することもあります。

なかでも誰もが日常生活の中で陥りがちなのが、自分の評価を見誤ってしまうというバイアスです。自分は客観性があるから、自分の意見は一般的で、広く世間に受け入れられていると考えてしまう傾向があります。

本稿では、自分の評価に関する認知バイアスを紹介します。

あなたの「当たり前」は偏っている

「ブレスト」「あいみつ」「テレコ」「バッファ」……。あなたはすべての意味を答えられますか?

自分の働く業界では当たり前に使う言葉でも、違う業界やプライベートの場では通じない言葉、いわゆる「業界用語」があります。

あなた自身、新入社員の頃は意味がわからなかったのに、今では気にすることなく使っている言葉があるのではないでしょうか。その言葉の意味を知らない人がいることすら、想像できなくなっているかもしれません。

このように、自分が知っていることは、ほかの人も知っていると思い込んでいることを「知識の呪縛」と言います。

ある実験では、参加者の一方のグループに、頭の中で有名な曲を思い浮かべながら、その曲のメロディに合わせて机を指でタップしてもらいました。そしてもう一方のグループには、それを聞いて曲名を当ててもらいました。

タップした参加者は、「聞き手の半数は曲名を当ててくれるだろう」と自信をもって推測しました。しかし、実際に当たったのは150曲中たった2曲だったのです。

この結果からは、人がものごとを自分の視点から捉え、相手の視点を理解していないことがよくわかります。

両手で顔を覆っているビジネスマン
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