かつての子育ては今より単純だった

ほんのひと昔前まで、外で知らないおじさんが子どものいたずらをしかる、という場面も見られました。

今は子どもが遊んでいると、うるさいとしかる人もいますが、それは教育的理由というより、自分にとって都合が悪いからという理由がほとんどのようです。

かつての子育てという営みは今よりも単純でした。

乳児や幼児の死亡率がはるかに高かったので、子どもに生存と安全さえ提供すれば、親は十分「合格点」だったのです。

教育にしろ就職にしろ、基本は親の生業を引き継ぐだけなので、さほど高度な知識は求められませんでした。

しかも戦後になると、子育てに関わる人数が加速度的に減っていきました。

核家族化によって子どもの面倒を見るのは両親2人だけになりました。近年はシングルファーザーやシングルマザーも珍しくなくなりました。

「子どもは地域全体で育てるもの」という意識が薄れ、個人すなわち「親の責任」へと変わっていったのです。

手をつないでいる父と息子
写真=iStock.com/PeopleImages
「子どもは地域全体で育てるもの」という意識が薄れた(※写真はイメージです)

子育ての「合格点」が高くなっている

子育てが「密室」化したことで、子どもにとって息苦しい状況が生まれました。

親のほうも大変です。子育てで親がやることが増え、より幅広い責任が求められています。

子育ての「合格点」が昔より高くなっているのです。

社会的にも大学進学率が上がったことで、今や最終学歴は大卒が半ば当たり前のようになっています。

そのうえ、子どもを良い大学に入れたいなら、「中高は公立で十分」とは言ってはいられなくなり、中学受験も激化しています。

現代は親子ともに、シビアな時代になっているのです。