地方・中小企業は、あなたのスキルを求めている

私自身地方の中小企業や地銀、自治体に赴くと、今でも驚くような場面に直面することがあります。

例えば、地方のとある企業で名刺交換した時のことです。来る人来る人の名刺に、みんな同じメールアドレスが書かれているということがありました。部署で1つのメアド、下手をしたら会社で1つのメアドしかないのです。これで一体どうやって仕事をしているんだろうと首をかしげました。

ある地方企業から、当社へファクスが届いたこともありました。しかもその直後、当の担当者から電話もいただき、「私のメールアドレスをファクスしておいたので、ご確認ください」とおっしゃるのです。メールアドレスをファクス??? 私の頭の中にはいくつもの「?」マークが浮かび上がりました。

でも、よくよく考えてみれば、それも不思議ではないかもしれません。例えば70代の創業者が、同年代の部下数人と会社を運営しているといった場合、必ずしもITを駆使しなくても、電話とファクスで事足りるという状況は、十分ありえます(生産性の高い低いは別として)。

日常の業務スキルが「特殊スキル」に変わる

でももし、こういう会社に東京の企業で働く人が、副業なり転職なりで参加したらどうなるでしょうか。日頃からグーグルやセールスフォースを使いこなし、クラウドシステムも使い倒している人です。日常の業務スキルが、ところ変われば重宝される特殊スキルとなることが十分お分かりになると思います。

地方企業の中には、この25年間ほど、ITやデジタル技術を一切活用してこなかった……というところも少なくありません。しかし、それは裏を返せば、「25年間分の伸びしろ」があるということです。たった1人でも、ITに詳しい人物が加われば、成長が爆発的に加速する可能性が大いにあります。都市部の企業で働く人が地方に行くと、その企業だけではなく、その街・その地域でもっともデジタルに詳しい人になるということもザラなのです。

バッグを背負った男性
写真=iStock.com/miodrag ignjatovic
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もし、本書を読んでいるあなたが、「自分のスキルなど取るに足らない」などと思っているのなら、どうかそんな思い込みは捨ててください。あなたが特に「すごい」と思っていなくても、そのスキルや能力、経験を活かせる場所が、必ずどこかにあるはずなのです。