「組織に入ってくるのは、働いたことのない若手」だけ
これまで日本の産業は、長らく新卒一括採用・終身雇用制度を守り続けてきました。組織に外部から入ってくるのは、常に「働いたことのない新人若手」であり、ミドル層もシニア層も、自社のことしか知らない人間ばかり。そんな集団が、世間をアッと言わせるようなイノベーションを起こせるかといえば、難しいのは当然です。
私自身は、必ずしもこれらの働き方自体が悪とは思いません。日本は職人を多く育んできた国です。若い頃に親方の下につき、コツコツと生涯をかけて経験と知識を積み重ねる。そこに職業的な美意識を持つ国民性もあるのでしょう。企業側も、被雇用者と長く付き合い、社員の家族も大切にする独特な企業文化を育んできました。
一方で、そうした働き方は、近年の経済や産業構造にマッチしなくなってきています。ビジネスモデルや商品、社会の価値観が非常に速いスピードで置き換わる時代に、「新卒一括採用」「終身雇用制度」を貫いていては、新しい付加価値やビジネスを生み出すことが難しいからです。
自分のスキルが輝く場所はどこかにある
でも、これは非常にもったいない話です。本来、優秀なはずの日本人が、たった1つの会社で職業人生を全うすることで、知識やスキルを墓場まで持って行ってしまうからです。個人の観点から見ても、産業界全体から見ても、これはとても大きな損失です。これこそ「人材の流動性」が生まれないことの、最大の弊害と言えるでしょう。
一人のビジネスパーソンが仕事を通じて得る知識やノウハウは、いわば原石のようなものです。もしかしたらその“石”は、その会社では常識的なもので、まったく代わり映えしない最低限のスペックに見えるかもしれません。でも、視点を変えれば、その石は磨けば光る“宝石”になるかもしれないのです。
今いる場所では、自分の能力は単なる“石”に過ぎないけれど、働く場所を変えれば、それは“宝石”になるかもしれない。だからこそ、人は企業や業界、土地を移動していかなくてはならないのです。
自分の“石”を必要としている人々はどこにいるのか。どこに行けば、この“石”はさらに磨かれ、輝き始めるのか。自分の持つ「万能チケット」が、どこにでも通用するものになるためには、どうすればいいのか。だからこそ私は皆さんに「副業」「兼業」「転職」をお勧めしているのです。