あなたの人生は「20代の若かりし自分」に決められている

日本の“就社”システムは、「分別も何もついていない」ひよっこ時代に、自分の残りの人生すべてを賭けるギャンブルをしているようなものなのです。

そもそも新卒の22歳の若者が“就社”の際に発揮した価値観や審美眼は、本当に正しかったと言えるのでしょうか。服の趣味や音楽の趣味、交友関係や読む本など、学生時代に比べて、随分と自分の「選択」も変化してきていませんか。

多くの人は(私もそうですが)、20代前半でやらかしたアレコレを自嘲気味に思い返すはずです。

「あんな恥ずかしいこと、なんでしたのかな?」
「まぁ、あの頃は若くて、分別も何もついていなかったからな……」と。

それなのになぜ、22歳当時の“就社”の判断が正解だったと胸を張って言えるのでしょうか。

若気の至り、企業名やブランド力だけで選んでしまった、先入観やプライドで目が曇っていた……、そんな人も少なくないはずです。

生涯を1社だけに捧げるリスク

22歳から仮に70歳まで働くとして、その期間は約48年間にも及びます。つまり約半世紀。その間、自分の価値観がまったく変化せず、成長もしないということはありえません。

20代、30代と年を重ねれば、結婚をし、家庭を持つかもしれません。親の介護も始まるかもしれません。働いているうちに価値観が変化したり、この部分をもっと学びたいと大学院に進んだり、留学への夢も出てきたりするかもしれません。ライフステージが変われば、価値観や優先順位も当然変化するはずなのに、なぜか「仕事」だけは、生涯変化しない前提で私たちは生きています。

街に飛び込む日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

さらに言えば、半世紀も経てば、多くの企業の役割や立場も激変します。1989年のバブル期には、世界の時価総額ランキング10位中、7社を占めていた日本企業も、22年現在はみごとにゼロの状態です。30年前の「イケてる企業」が、30年後にはこの世から消滅していることなどザラな世界で、いつまでも右肩上がりで成長し続けられる企業などは稀有です。「生涯を通じてたった1社に身を捧げる」ことのリスクは、この事実だけ見ても、十分お分かりになるかと思います。「22歳の若かりし自分に、人生の大半を決断させた」状態を、このまま放っておいていいのでしょうか。