表立っては言わない企業の本音
私が経営する会社「みらいワークス」では、フリーランスの高度人材や副業人材を企業にマッチングする仕事をしています。同時に、企業から依頼を受け、現役社員のリスキリングやセカンドキャリアアップを目指すセミナーやプログラムも行っています。
その関係で主に大企業を中心に年間100社ほどに営業を行い、「セカンドキャリアの開発支援ソリューション」を提案していますが、ヒシヒシと感じるのは「これほどまでに企業は中高年社員を手放したがっているのか……」という現実です。実際、2022年も100社程度の企業に営業しましたが、「当社にはそんな提案は不要です」と断られたのは数社だけでした。つまり、それ以外の90%近くの企業は、「戦力にならない中高年社員は、外の世界を見てもらい、他に稼げる場所を見つけてほしい」と、切に願っているということです(主に人事部と経営者層……)。表立って言わないだけで、本音では、「辞めてもらって構わない」と考えているということです。
大量生産された替えの効く人材たち
さて、こうした企業を「身勝手な経営陣」、「搾取するだけして、捨てるのか」と、一方的に非難できるでしょうか。
私はそうは思いません。むしろこれまでの日本式の働き方(働かせ方)のほうが、よほど見直すべき点が多くあったのではないかと感じています。
転職すれば、また一から新しい文化・常識・仕事のやり方を身に付けなくてはなりません。しかし、1社でのみ働き続けることのリスクを考えてみてください。ある会社に40年勤めたとしても、蓄積されるのは、その会社でのみ通用する常識や文化、仕事のやり方が多いです。
つまり、たった1社に骨をうずめることが前提の終身雇用制度は、「よそでは通用しない人材」を大量生産することに他ならないのです。
そもそも日本人の職業観は、「就職」ではなく「就社」の傾向が強いのです。職業そのものより、どの「会社」に選ばれるかがもっとも大切なポイントであり、選ばれた会社が名の通った大手であればあるほど、「勝ち組」として社会に持てはやされます。就社した以上は、その安定を手放さないために必死で働き続けますし(時には社畜と呼ばれようとも……)、会社もそんな社員を定年まで囲い込むのが普通でした。だからこそ日本企業は何の色もついていない新入社員を好み、中途採用を嫌ってきたのです。
社員も自分が「よそでは通用しない人材」であることを長いキャリアの中でだんだん察知してしまうからこそ、「この会社をクビになったら路頭に迷う!」と恐怖心を抱き、ますます企業にしがみつく状態が続いてきたのです。