いつの間にか「よそでは通用しない人材」に

皆さんは、「たそがれ研修」という言葉をご存じですか。企業が40~50歳代の自社の社員たちに、セカンドキャリアを考えてもらうために用意する様々なプログラムや研修のことです。

もともとは銀行など金融業界から広まった概念のようですが、今や多くの企業で「たそがれ研修」は行われています。もちろん、ここまでダイレクトには表現していません。「セカンドキャリア研修」などと立派な名称が付いています。ただし、「セカンドキャリア」なんて聞くと、響きはいいですが、要するに「うちの会社を辞めて、別のところで生きていく準備をしてもらう」ための研修です。正直、あまり気持ちのいいものではありませんよね。

アジアの上級ビジネスマンは動揺し、階段に座っています
写真=iStock.com/PonyWang
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ただ、私自身はこうした取り組みはむしろ好ましいと考えています。たしかに研修を受ける側にしてみれば、これまでは「会社に尽くせ」と言われてきたのに、いきなり掌返しをされたかのようなショックを受けるかもしれません。でも、別の見方をすれば、この年代の人はまだ外の世界で通用しうるポテンシャルを秘めているとも言えるのです。

「たそがれ研修」はむしろ優しさ

仮に今の会社ではパフォーマンスを発揮できない状態になっていたとしても、他の会社や組織ではその限りではありません。そう考えると、多くの人にとって、「45歳でたそがれ研修」は、「65歳で就職先を探す」よりも、はるかに希望溢れる活動ではないでしょうか。

「そんな非情な首切りを考えている企業なんて、一部の特殊な企業だけだろう」「なんだかんだ言って実直に働いて、分不相応の出世さえ求めなければ、定年まで働き続けられるはずだ」

ここまでお読みになった人から、そんな声も聞こえてきそうです。

そのお気持ちも理解できます。

しかし、残念ながら事実はそうではありません。