子供をあてにせずに資産を確保しておくべき

自分一人で介護を抱え込んでしまって介護離職することだけは絶対に避けなければいけません。収入が減ってしまうと共倒れになるケースが多いからです。行政の協力を仰いで自分を犠牲にしない最善の方法を探すべきです。

もうひとつやってはいけないのが、老後資金や子どもの教育資金を介護につぎ込んでしまうこと。親を大事にすることは悪いことではありませんが、自分や子どもの人生を犠牲にしてはいけません。そのためには、親が元気なうちから依存されない関係を作っておくことが重要です。親は親のお金でできる範囲の介護を受けてもらう、その中で協力できることはする、という関係が理想的でしょう。

子どもとの関係でも、どちらかが依存するような関係は、自分のためにも子どものためにもならない結果を招きます。息子夫婦が家を建てるというので、自分たち夫婦のために持っていた老後資金を頭金にしろと、全部渡してしまった知り合いがいました。頭金を出す代わりに、自分たち夫婦が住む部屋を作るという交換条件で、老後はそこでのんびり暮らそうと考えていたわけです。

ところが、いざ生活を始めたら息子の奥さんとうまくいかなくなって、結局その家を出る羽目になったというのです。老後の資金は全部渡してしまってもうありませんから、この先、節約しながらどうやって暮らしていこうかと途方にくれていました。

こういったケースがよくあるので、子どもをあてにするのではなく、自分が最後まで暮らす資金は自分で確保しておきたいもの。

家から外を見ている孤独なアジアの老人のクローズアップ
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

子供に財産を残してもろくなことはない

逆に、子どもに財産を残してもろくなことはありません。財産をあてにして自立できなくなっているケースも多い。孫の誕生日にいくらか渡してあげるのはいいでしょうけど、自分で稼いだお金は自分で使い切るべきです。

「俺たち夫婦は自分たちで暮らすから介護が必要になっても面倒は一切見なくていい。その代わり、お前たちも自分で生きていきなさい」。そういう、お互いに依存せず、自立できている関係を作っておきたいですね。

老後資金2000万円問題というのがありました。定年退職してから死ぬまでに夫婦でいくらあれば安心かということなんですが、あれほどいい加減な数字はありません。人によって生活の在り方が違うのですから、どれくらい必要かなんていうことは決められないし、実情に生活を合わせるほうが現実的です。

今の時代、悠々自適な老後生活などということはまずないのですから、お金が足りなかったら働けばいい。その上で、その収入に合わせて生活を縮小すればいいのです。60代以降の生き方を考えるときに、生活のレベルを下げたくないと思う人もいるでしょう。現実と照らし合わせてそれで生きていけるのだったら問題ないですよね。

でも収入が減ることを前提に、夫婦2人でこれから20年30年と生きることを考えると、病気もあるだろうし、介護も必要になるかもしれない、貯金を足しても足りるとは言い切れないというような場合には、生活を縮小しなければいけませんよね。