「やりたいことが特にない」人生を変える
「起業しよう!」と思い立った当時のこと。
私自身「起業」を思いついたのはいいけれど、何か強烈に「これをやりたい!」「これが好き!」と熱望するものがなかったのです。
でも、考えればそれもそのはず、「そこそこ勉強して、そこそこ知名度の高い会社に入って、そこそこいい年収を得る」というくらいの漠然とした目標しかなかったのだから当然です。改めて自分の「好きは何だろう」と考え始めても、最初は何も思い浮かびませんでした。
いろいろな業界の人と会ったり、自宅でゆっくりくつろいだりしながら、過去の子ども時代も振り返り、「自分の好きだったものは何だろう」と考えました。試験で頑張っていい点を取り、有名大学に進学し、誰もがその名を知る大企業に就職する――。かつてそれは「勝ち組」人生スタートのゴングのようなものでした。
しかし、人生何が起こるか分かりません。心や体の健康を崩して、その会社を辞めることになるかもしれませんし、人間関係のトラブルで嫌気がさすこともあるでしょう。そもそも「これは自分のしたいことではなかった」と気づく人もいるでしょうし、思わぬ“転機”がやってくるかもしれません。
大学名も、企業名も取り払った後に残る、自分は一体「何が好きな人間なのか」。こう自ら問いかける時間は、私の人生で貴重なひとときとなりました。
3つの掛け算で「ライフワーク」を見つける
考え続ける中で、見えてきたことがありました。それは、人生を賭けるべきライフワークには、3つの掛け合わせが大切だということです。
②「自分ができること」
③「自分にとって“社会的意義がある”と感じられること」
この三者が交わる領域で仕事ができ、なおかつ自分や家族が食べていけるだけの収入を得られたら、きっと幸せになるだろうと気づいたのです。
実は、みらいワークスを立ち上げる前、「“環境問題”を解決するための仕事はどうだろう?」とアイデアを持ったこともありました。ちょうど東日本大震災や福島第一原発事故が起きた時期で、世の中の人の助けにもなるし、社会的意義のある仕事がしたいと考えていた時期です。実際に東日本大震災の直後のゴールデンウィークには、チェルノブイリ原発にも足を運び、原発と自然、サステナブルな社会について、現地で体感してきました。
しかし、この視点は、③「社会的意義」は大きかったものの、①と②の視点が抜け落ちていました。つまり「社会的意義は大きい」けれども、環境問題を大学で学んだわけでもなく、放射能に詳しいわけでもない自分に「できること」は少ないと気づいたのです。ましてや、「自分が好きな興味範囲」でもありません。チェルノブイリの荒れ果てた光景に心を痛めはしたものの、「これは自分が起業してどうこう」という領域ではない。ここに興味を持つ人に任せるべきだと感じてしまったのです。