企業の本音は「高齢者を雇い続けたくない」
現在、日本企業の94.4%は、定年制を設けていますが、問題はその年齢です。厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、2017年時点で定年を「65歳以上」に定めている企業はわずか17.8%でした。しかし、5年後の2022年には24.5%にまで上昇しています。
さらに政府は定年年齢の引き上げや、企業の定年制を廃止するよう推奨もしています。少子高齢化が進む日本では、「高齢者もなるべく長く働いて!」というのが、政府の切実な願いなのです。
「ならば安心じゃないか。自分が働きたいと思えば65歳でも70歳でも働けるようにいずれなるはずだ。自分が定年を迎える頃には、企業も高齢者雇用に積極的になるだろう」と思ったそこのあなた、大いにご注意ください。実はここには落とし穴が潜んでいるからです。それは、肝心の企業は本心では「高齢者を雇い続けたくない」と考えているという事実です。
「経験社数1社のみ、65歳」を採用するか?
ここでちょっと立場を変えて、「あなたが経営者だったら」と想像してみてください。設定は、「実直に事業を続けているが、決して資金は潤沢とは言えない中小企業」にしましょうか。事業継続にかかる経費の中で人件費は大きな部分を占めます。できるだけ若くて行動力もあり、スポンジのように新しいことを吸収し、どんどん成果を出してくれる素直な人材が欲しい。だけど一方で古参の従業員も雇い続けるとなると、なかなか強気で新規採用には踏み出せません。そうした中で、企業があえて高齢者を雇い続けるメリットは、ないのが実情です。
たしかに勤続年数の長い社員は、社内事情や業界情報にも詳しいかもしれません。長年培ってきた専門知識や熟練の技、百戦錬磨の経験値、加えて若者にはない豊かなコミュニケーション能力や調整力なども、大いなる強みになるでしょう。
しかしこのVUCAの時代には、フレッシュな発想や柔軟な思考力、アイデア力を吸い上げないと、事業の発展は見込めません。ましてや65歳で、経験社数がたったの1社、しかもそれまでの役職に安穏として、知識のアップデートも怠ってきたとしたら……。価値観が凝り固まっている人材だと敬遠されても、仕方ありません。