政府の提言でも100%当てにしてはいけない理由

いくら政府が提言をしても、「ならばわが社で雇い続けましょう」と前のめりにはならないはずです。あえてバッサリ言ってしまえば、正直、企業の人事側からすると、コスパの悪い人材だと思われている可能性さえあるのです。

そもそも政府の提言はあくまで“推奨”であり、義務ではありません。高齢者の雇用延長や再雇用をしなくても、企業には何のペナルティもないのです(2025年から65歳までは雇用確保は義務、70歳までは努力義務)。

今後もブルーカラーの仕事はニーズがあり続けるでしょう。ビルの清掃、スーパーのレジ打ち、工事現場の警備員などです。しかし、知的労働の領域で、つまりホワイトカラー層の高齢者を今後も継続雇用していく企業は、これからも急増することはないでしょう。

「コツコツ働いていれば大丈夫」という幻想を捨てる

「ではどうすればいいのか!」という声が飛んできそうですが、大丈夫です。希望は十分にあります。ただし、その希望を実現するためには、「雇用」という概念へのマインドセットを根本的に変える必要があります。

これまでは「企業」の下に、「個人」が大勢働いていました。今後は「企業」と「個人」は対等の立場に並び、選び・選ばれる関係になっていくはずです。「企業に何をしてもらえるか」ではなく、「企業に対して自分個人は何ができるのか」という意識を持つことからまずは始めてください。

当然「できること」が増えれば、「企業」からの信頼や報酬は高くなります。しかし反対に、「できること」が増えなければ……、あなたは「よりできる人」と代替可能な存在であることを、自ら宣言していることになってしまうでしょう。「コツコツ実直に働いていれば、自分は大丈夫」という根拠なき自信と安心感を、どうぞ捨ててください。

「課題は常に上から提示され、〈ToDoリスト〉をこなしていれば大丈夫」という、おんぶにだっこの状態の会社員マインドも捨ててください。「働いた時間で給料をもらう」という感覚、「既存領域で成果を出していれば大丈夫」という過去の実績に頼る感覚も、どうか思い切ってゴミ箱に捨ててください。