外国人だから特別にしているわけではない
同じく南部の高雄市の会社を訪問し、会議をしていたときにも似たような経験をしたことがあります。
このときも会議の途中で「台北の麺よりもここの味付けはたんぱくでおいしいよ」という話になり、会議が終わったあとにご馳走してくれたのです。
台湾に通うようになった最初のころは、こうしたおもてなしは私が外国人だから特別にしてくれるのだろうと思っていました。
ところが、台湾人同士の付き合いを見る機会が増えてくるにつれて、こうしたおもてなしは彼ら同士でもよく行われているのがわかってきます。北部の台北から南部の高雄に訪問者があれば、高雄の名物でおもてなしをしますし、高雄の人が台北に行けば、台北の名物料理で歓待します。このように、「美味しいものを食べてもらうのが最上のおもてなし」という文化が台湾には深く根付いているのです。
たった3日間の旅行で3キロも太った
その証拠に、私の両親が台湾を訪れた際には、台湾の友人が台湾グルメツアーを企画してくれたことがありました。朝食から夜食まで、B級グルメ、点心、台湾デザートなどを堪能する内容で、あちこちに大移動しながらの見事な食い倒れツアーでした。たった3日間の旅行でしたが、私の父は3キロも太ったほどです。
日本のクライアントのアテンドで台湾を訪れると、食べ物でのもてなしが続くので、クライアントの人たちは常にトイレの場所が気になって私に確認してきます。一方で、もてなす側の台湾の人たちは「日本のお客様」が食事に満足しているかどうかが気になり、日本のクライアントの反応を私に確認するというのがいつものパターンです。
日本人の多くは、自分たちこそが「おもてなし」の最たる実践者だと考えているかもしれません。しかし、台湾の人たちのおもてなし精神のレベルも相当なものです。
そんな彼らのおもてなしの方法を知ることで、新たなおもてなしのヒントを得られるような気がします。