※本稿は、御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
子供にも「損をするな」と注意する
以前、隣同士である日本と韓国、台湾の子育てについて書かれている記事を新聞で読んだことがありました。それによると、日本の子どもは親から「他人に迷惑をかけないように」と言われながら育つと言います。一方、韓国では「人に負けるな」と言われるそうです。さらに中国では「他人に騙されるな」と諭されるとのことでした。
この記事の内容に興味をもった私は、台湾のケースを知りたくなり、さっそく複数の台湾人に聞いてみました。すると、彼らから返ってきたのは「損しないように」「後れないように先んじて」という答えだったのです。
それを聞いてすぐに思い出したのは、就学期の子どもを持つ台湾の親たちが、小学校で後れをとらないように先んじて子どもたちを塾や習い事に積極的に通わせている日常の光景でした。
それぞれがお隣同士の国とはいえ、親の教えがこれほどまでにも異なるのですから、わかり合うのが難しいのも納得がいきます。
台湾は日本から距離的にとても近いですし、人々の外見も日本人によく似ているため、ついつい考え方も日本人に近いのではないか? と早とちりしがちなので注意しなくてはなりません。
給料のことでも堂々と聞いてくる
実際に台湾の人たちと付き合ってみると、日本人とは異なる考え方に触れる機会も多く、「似ている」との思い込みが強ければ強いほど、違いを実感したときの驚き具合は大きなものになります。
では、何がそんなに異なるのでしょうか?
まず初めに日本人が驚くのは、台湾の人たちの多くが自分たちのプライバシーに関してオープンであるという点です。例えばお金についていうと、日本では自分の給料の額や商売での利益、家の値段などはあまり人に話しません。
ところが台湾では事情が違います。給料のこと、商売のこと、家の価格のことなどをざっくばらんに話すだけでなく、相手にも堂々と聞いてくるのです。
聞き手に回るだけなら、ひとまずどうにかなるかもしれません。しかし、答えを求められる側になると、多くの日本人が戸惑います。
事実、駐在で台湾にやって来た日本人がとても驚くのが、給料の額を聞かれることのようです。駐在員の給料は現地採用の社員よりも高い場合が多く、うっかり正直に答えてしまうと、現地の人たちに不公平感を植え付けてしまう恐れがあります。これを避けるために、本社からは「給料の話はしないように」との通達が届くケースがあるくらいです。