家族血脈のつながりを何よりも信頼

私自身もお金のことを話すのは得意ではなく、相手から聞かれるとついつい言い淀んでしまいます。

台湾人がお金についてオープンなのは、「損をしない」ための防衛策なのかもしれません。損をしないためには、どうしても情報を得る必要があります。その情報を基に他人と自分を比較して、自分が損をしていないかを確認するのです。そうした考えが根底にあるため、「給料はいくらもらっている」「これだけ儲かった」という会話に抵抗がないのかもしれません。

日本の企業文化では、たとえ創業者であっても、自社がある程度の規模の企業に成長すると、「親族だから」という理由だけで身内を雇い入れることを避けようとするものです。

ところが、私が知る複数の台湾企業の場合、創業者の兄弟やいとこはもちろんのこと、それ以外の親戚でも積極的に雇用し、さらには社長の妻が副社長に就任している企業も見かけます。

こうした慣習を支えてきたのは、「家族血脈の繋がりが何よりも信頼できる」という非常に強い意識です。私が知っているケースでは、自分の姪を日本支社の支社長に任命した社長もいます。このように同族同士の結束が強いのが台湾の特徴であり、日本とは大きく異なる点です。

幸せなアジアの家族の家の肖像画。
写真=iStock.com/imtmphoto
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台湾のオーナー社長は、子供の国際性を重視

台湾のオーナー社長の多くは、子どもがまだ幼いころから後継者になるための教育を授けようとします。その際に親たちがこぞって重要視するのは、子どもたちに国際性を身につけさせることです。例えば、子どもが2人いたら、1人はイギリスに留学させ、もう1人は日本に留学させるというバランスを取りながら、一族のなかに幅広い国際性を取り込もうとします。また、台湾で企業規模を大きくするには外国企業との取引がマストのため、親は早いうちから子どもに外国語を学ばせます。

このように子どもたちを外国に留学させたり、幼少期から外国語を習得させたりするのは、将来的に自分の会社に入社させ、外国でのビジネス展開を考えているからです。直接の会社経営とは別に、有事に備えて日本をはじめとした海外に拠点を確保し、不動産などの資産を分散させてリスクヘッジをする狙いもあります。

家族や親族の関係を会社に持ち込むのは、社長だけではありません。家族ぐるみで会社との関係を築いている一般の社員もたくさんいます。