家族が同じ部署にいるほうが合理的
それをよく表すかのように、台湾企業の職場では家族が同じ部署で働いていたりすることも珍しくありません。
例えば社内恋愛で結婚した場合、日本では周りが気を遣うからという理由で、夫婦のうちどちらかが別部署に異動になるパターンが一般的です。ところが台湾では、そうした異動は行われず、夫婦は同じ部署で働き続けます。それを気にする同僚たちもいません。仕事さえしっかりとやっていれば特に問題はなく、むしろ同じ部署で働いていたほうがお互いの仕事を理解できるため、合理的だと考えます。家族の誰かが会社を見学しに来たり、挨拶にふらっと立ち寄ったりすることもあり、それを煙たがる風潮はほとんどありません。
幼いころ、母親が台湾の大手保険会社・新光人壽で働いていたという私の友人は、学校が終わると会社に行き、母親の隣のデスクを借りて宿題をやっていたと言います。
郵便局に勤めていた父のところにも、手紙の仕分けの手伝いに行ったことがあるそうです。
台湾企業では家族参加型イベントが盛ん
台湾では、大企業、中小企業にかかわらず、社員旅行に自分の家族を連れて来ることもよくあります。既婚者は配偶者や子どもを参加させ、独身者の場合は恋人や友人を同行させることが許されるのです。また、社員旅行には社長の家族も参加します。
台湾の企業のなかには「社内運動会」があるところも多いです。社長はもちろんのこと、企業幹部や社員、さらにはその家族も参加するエンターテインメントイベントになっています。かつては日本でも「社内運動会」が行われていましたが、すでにそうしたイベントを見ることはなくなりました。
台湾を代表する大企業の台湾プラスチックグループの運動会では「5キロ走」が名物種目で、創業者の王永慶(2008年死去。現在は実弟の長男の王文淵氏がグループ総帥を務める)は83歳になるまで数百人の幹部と共にこの種目に参加していました。
毎年のようにこの運動会に招かれた元総統の馬英九は、5キロ走に数十回にわたって参加しています。
社員旅行や社内運動会などのイベント開催の背景には、社員同士の親睦のためでなく、家族も共に参加してもらうことで社内での交友関係を知ってもらうと同時に、社員たちに社長や幹部の子どもに接してもらい、将来の後継者に親しみを感じてもらう意図があるのかもしれません。
そもそも台湾の多くの人たちは「社長の会社を子どもたちが継ぐのは当然」と考えています。そのため、社長の子どもが重要なポストに就くことに抵抗を感じません。