子供には「原始人」の時代が必要
――そうした親御さんには、なにを伝えるのですか。
【成田】まずは「原始人を育てなさい」とアドバイスをしています。
5歳までは「原始人の力」が育てられればいいのです。たとえば、五感を使って身を守る能力や、安全を確認したらリラックスできること。1日3回空腹を感じて食事を自発的にとることや、自律神経を働かせて体内環境を維持できること、敵が現れれば感情をむき出しにして怒ったり、逃げたり、戦ったりすること。
子供が原始人だと考えると、興味のある場所に走っていくことも、嫌なものは嫌だと言うことも、怖いと思ったら怖いと言うことも、当然ですよね。こうした行動に眉をひそめる親御さんもいるかもしれませんが、プリミティブな反応が出てくることは、むしろ歓迎すべきことなんです。
最初に改善するべきなのは睡眠
――原始人を育てるには、なにが重要ですか。
【成田】重要なのは睡眠です。小さいときから寝ないで勉強する、寝ないでお稽古ごとをするといった生活を当たり前にさせていると、「原始人の脳」が育たず、バランスを崩してしまいます。
5歳児の場合は、午後7時に就寝、午前6時起床が望ましいと小児科の教科書に書かれています。ただ、現代日本の状況から言うと、午後7時就寝はほとんどの家庭で不可能なので、私は午後8時就寝、午前6時起床の10時間を目指すようお願いしています。
以前、夜中に急に起きて泣き叫んだり、暴れたりする夜驚の症状が気になって診察に来られた方がいました。その原因を探っていったら、その子は3歳から幼児学習とピアノ、英会話のクラスなど、合わせて週6日の習い事に通わせていたというんですね。
さすがに「その生活はすぐに辞めないとまずいです」と伝えて、眠ることを優先してもらったら、そうした症状が一切なくなりました。睡眠はそのくらい重要なんです。