高学歴親は“先回り”してしまう
――「親御さんを巻き込む」とは、具体的にはどんな治療なのでしょうか。
【成田】まずは親御さんが子供にどういった声かけをしているのか、親子間のコミュニケーションについて丁寧に聞き取ります。たとえば、お子さんが宿題をやらないときに「やりなさい」「どうしてやらないの?」と一方的なコミュニケーションをとってしまう親は要注意です。
大人に見守られつつ、自由にさせてもらうことで、子供は初めて自分で考えて行動できます。その結果、失敗して叱られたり、怖い思いをしたりすることが記憶に残って「以前はこうして失敗したから今回はこうしよう」と修正していく。その積み重ねで主体性や課題解決能力が育っていきます。だから、親が先回りしすぎると、そうした子供の力を奪ってしまうんですね。
――なぜ「先回り」をするのでしょうか?
【成田】親御さん自身の教育水準が高いほど、「いまこれをやらないと子供の将来が危うい」と考えてしまうのでしょう。自分のことを社会での成功者だと思えば思うほど、「自分のような人間になるにはちゃんとしたステップを踏むしかない」と思い込んでしまうのです。
いわゆる「高学歴親」も、若いときに失敗がなかったかと言うとそうでもないのですが、子供がステップを踏み外しそうになると、いてもたってもいらなくなってしまうんですね。子を思う気持ちは理解できますが、「悪気はなくても、子供には悪影響がある」と伝えています。
「3分でいいので黙っててもらえませんか?」
【成田】私が親御さんを巻き込んで子供を診るようになってから、こうした先回りをはじめとして、過干渉な親をたくさん見てきました。とくに中学生くらいの子供が新患で来たときに、口を開いてしゃべるのがお母さんだけというケースが非常に多かったんです。
私や田副が子供に向かって「学校に行こうとすると、気持ちが悪くなるの?」などと聞いているのに、親御さんが「そうなんですよ、あのね先生……」と食い気味に話し始めるのです。
――そうした親御さんが珍しくないのですね。
【成田】そうなんです。あまりに腹が立ったときは「お母さんに聞いてるんじゃないから、3分でいいから黙っててくれませんか?」と言ったこともありました。