過干渉は「不自然ないい子」を作り出す

――そうした過干渉な親御さんに共通する特徴はありますか。

【成田】「お子さんが小さいときの様子はどうでした?」と聞くと、親御さんのほぼ全員が「小さいときは本当にいい子でした」と言うんですよ。しかも、「いい子」の内容を聞いてみると、みんなで食事に行っても騒がない、わがままを言わないなど、親の言うことを素直に聞く子が圧倒的に多い。診察し始めた当初から、公認心理師の田副と「これはおかしいのではないか?」といつも話していました。

――小さいうちからお行儀がよすぎる子は、不自然な「いい子」ですよね。

【成田】年齢がまだ4~5歳なのに「いい子」だとすれば、それは「しつけをされた犬」と基本的には同じです。犬たちが「おすわり」と言われて座っているのは「ここは公共の場だから座っていないといけないんだ」と思っているわけではなくて、座ったらエサをもらえるから座っているわけですよね。

「いい子」として振る舞う理由も「この行動をすると親にかわいがられる」という条件反射なんです。裏を返すと「これをしないと親に嫌われる」というメッセージを読み取っていて、これは子供にとってはものすごく恐怖なわけですよね。

「親に嫌われる行動をしたら、私はもう見捨てられる」と思っているので、そうした土台が不安障害をはじめとした様々な症状に表れてきても不思議ではありませんよね。

――表向きはやさしいけれど、実際には脅しているわけですよね。

そうです。やさしい脅迫になっているんです。

「あなたには可能性がある」は脅しになっている

【成田】頭のいい親御さんたちは「脅し」を見せないようにして、しつけという名のもとにそうした行動をつくっていくわけですが、小さいうちから親の表情を読み取ったり、言語の理解が早かったりする子はそうしたダブルメッセージを受け取ってしまうんですよね。

たとえば、「この子、体験に行ったらやりたいって言ったんです」と言って、子供の意思を尊重しているというスタンスで、次から次へとお稽古ごとをさせる親御さんがいます。私からすると、小さい子供はすぐに「やりたい」「おもしろい」と言うと思うのですが、親御さんは子供にすごく期待をかけてしまう。

それで小学3年生くらいになった子供が習いごとを辞めたいといったときには、「辞めたいの?」と一旦は共感しているようなことを言いつつ、「でもね、ママはあなたがここまで頑張ってきたことを素晴らしいと思うの。だから、いま辞めちゃうともったいないと思うのよ。絶対に○○くんはオリンピックの選手になれると思うから、もうちょっと頑張ってみるのはどうかな?」なんて言うんですね。

ピアノを練習する少女
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

――まさに、ダブルメッセージですね。

【成田】子供からすると不安でしょうがない。子供のためを思って「あなたの可能性はあるのよ」と言われてしまうと、子供は反論できないんです。自分でやっと決心したことをお母さんに伝えたのに反論できずに、嫌なことを渋々続けなければいけないのは非常に苦しいですよね。