「私の息子がその例外なんです」

――「高学歴親」は、そうした成田先生のアドバイスを素直に聞けるのでしょうか。

【成田】聞き入れない人もけっこういますよ。「先生が診てきた患者さんはそのやり方でみんなよくなったんでしょうけど、うちの子だけは例外なんです」と真顔で言われたこともありました。その親御さんは結局、別の病院を受診したうえで、また私のところに戻ってきましたけどね。

――なんと言って戻ってきたんですか?

【成田】そういう場合は「子供がやっぱり成田先生がいいと言うんです」と言っていましたね。

私たちは「ドクターショッピング」と呼んでいるのですが、「あちこちのお医者さんや専門家を渡り歩いて自分が納得できる人にお願いするのがいいよ」とあえて言うと、大抵は戻ってきます。ただ、診察をする中で子供がよくなっていっても「当たり前だ」という顔をされることも多い気がします。

親が嘘をつくから、子供も嘘をついてしまう

――プライドが高い親御さんは、どこまでいってもプライドが高いんですね。

成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)
成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)

【成田】自分に落ち度があることを認めたくないんでしょうね。どんな人も一人では生きていけないので、誰かに助けてもらわなければいけないんですけど、社会で成功したという自負のある人ほど、自分以外の人は信じられないところがあります。

そうしたスタンスを子供に押し付けてしまうと、子供が困ったときに「助けて」と言えなくなり、追い詰められてしまいます。それで、嘘をつくんです。自分がつらい立場にあっても、嘘をついて取り繕っているので、最後の最後でひどい症状が出て、診察に来るというような。

子供はもちろん、親御さんの中にも、誰かに弱さを晒して助けてもらおうとする行動パターンがつくられていないので、親も子も折れてしまうケースも多いですね。

――親が嘘をついているから、子供も嘘をつかざるを得ないということでしょうか。

【成田】そうなんですよ。親御さんも若いときにはけっこう失敗しているわけなので、子供には失敗談を積極的に聞かせてあげたほうがいいですよね。そうすると、「そんな失敗をしたのに、お父さんは大人になっても楽しそうに生きている。僕も大丈夫だ」と思ってもらいやすくなります。自慢話の代わりに失敗談を話すことで、子供の肩の荷を少しおろしてあげられるんじゃないかなと思います。

(構成=佐々木ののか)
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