請求から4カ月後、障害基礎年金410万円が振り込まれた
以上のことから、長男の日常生活は母親の支援がないとかなり厳しい状況にあることが分かりました。長男の様子をメモし終えた筆者は、視線を母親に向けました。
「今お話いただいたような内容を、私の方で病歴就労状況等申立書にまとめていきます。発病から現在までの状況もヒアリングする必要がありますが、それはお母様からご長男に事情を説明いただき、ご長男から同意を得てからにしましょう」
「分かりました。長男にも伝えてみます」
面談後、長男から同意を得た筆者は、障害基礎年金に必要な書類を揃えて請求をしました。
請求から4カ月がたった頃。母親から障害基礎年金の振り込みがあったとの連絡がありました。
「おかげさまで20歳当時から障害基礎年金が認められ、初回に約410万円が振り込まれました。その後、長男と話し合い、私のパート収入が減った後は障害基礎年金を生活費に充ててもよいということになりました」
そこまで話した後、母親は急に声のトーンを変えました。
「本当なら長男のために貯蓄をしていきたいのですが……。そこまでの余裕はありません。障害基礎年金は大変ありがたいのですが、親亡き後、長男は一人になってしまうので、障害基礎年金の収入だけではとても生活ができませんよね?」
「その場合、グループホーム(障害のある方が必要な支援を受けながら共同生活を送ることができる住居)も検討してみましょう。グループホームにかかる費用は、障害基礎年金の2級と同じくらいの月額約7万円になっています。仮に貯蓄がほとんどなくても、親亡き後の生活も何とかすることができると思われます」
「なるほど、そのようなものもあるのですね。さっそく長男に話してみます。ご相談する前までは目の前が真っ暗な状態でしたが、おかげさまで一筋の光を見たようでした。この度はご協力いただき、本当にどうもありがとうございました」
今回の対策で母親のお金の不安が完全に解消されたわけではありませんが、それでも少しは役に立てられたようで筆者も嬉しく思いました。