DV夫から逃走して離婚も…財産分与0円養育費0円

「就労は難しいと思います。長男は10代の頃からひきこもり状態にあり、現在までほとんど外に出ていませんし……」

「そうなのですね。差し支えなければ、ご長男について少しお話をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい。構いません」

母親から長男の状況を伺うことにしました。

長男は小学生の頃まで、特に大きな問題もなく毎日を楽しそうに過ごしていたそうです。しかし長男が中学生になると状況は一変してしまいました。

学校の教室でテストを受ける生徒たち
写真=iStock.com/ferrantraite
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父親の会社が業績不振によりリストラを敢行したのです。父親はリストラされずに会社に残れましたが、従業員の数が減ったため、業務量がかなり増えてしまいました。職場での人間関係も悪化していき、父親は常にイライラしている状態に陥ってしまったそうです。

そのイライラの矛先は母親と長男に向かいました。母親や長男を怒鳴る、暴言を吐く、時には暴力をふるうこともあったそうです。そのような日常に耐えきれなくなった母親は離婚を決意。逃げるように離婚をしたので、財産分与や養育費の話をする余裕はありませんでした。

離婚後、引っ越しをした母親と長男は、そこで新たな生活をスタートさせることになりました。父親の援助は期待できないので、母親の収入で親子二人分の生活費をまかなわなければなりません。母親は正社員になることができなかったので、フルタイムのパートで働くことにしました。

引っ越しをしたことにより、長男は中学校を転校することになりました。しかし、その中学校の環境は、今まで長男が経験したことのないようなものでした。授業中にクラスメイトが騒いでしまい授業にならない。休み時間になると男子生徒同士で取っ組み合いのケンカをする。男子と女子の仲が悪く大声で怒鳴り合う。先生は大声で叱ってばかり。長男はクラスメイトからいじめを受けていたわけではありませんが、そのような環境に身を置くうちに、次第に体調に異変が出てきてしまいました。朝布団から出ることができない、朝食がほとんど食べられない、微熱や頭痛がいつもあるといった状態になってしまったのです。

心配した母親は、長男を近所の小児科へ連れていきました。小児科で血液検査などをしましたが、特に体に異常は見られませんでした。

医師からは「学校になじめていないことが原因かもしれません。ストレスからくるものかもしれませんので、しばらく様子を見ましょう」と言われました。