冬場は1カ月以上シャワーすら浴びないことも

「長男は26歳なので、20歳までさかのぼると6年分になるのではないですか?」

「残念ながら、障害基礎年金の時効は5年となっています。つまり『5年よりも前の障害基礎年金は時効消滅によりもらえなくなってしまう』ということです。逆に言うと『仮にご長男が20歳当時から障害基礎年金が認められたとすると、過去5年分はさかのぼって振り込まれます』ということです。何はともあれ、すでに時効が発生していますから、すみやかに必要書類を揃えて請求するほうが望ましいでしょう」

それを聞いた母親は不安を口にしました。

「そんなにすぐ請求できるものなのでしょうか? 障害年金を請求するためには、たくさんの書類を揃える必要がありますよね?」

「その辺は大丈夫です。ご長男の同意が得られれば、私もご協力いたします。必要書類は私の方で揃えていきますので、後はご家族からのヒアリングができれば請求までこぎつけることができます」

「ヒアリングとは具体的にはどのようなものなのでしょうか?」

「主にご長男の日常生活の様子になります。障害基礎年金の必要書類のひとつに、病歴就労状況等申立書というものがあります。この書類には、発病(体調を崩した時)から現在までの状況を具体的に記載していきます。その中で最も重要なのが『ご長男がうつ病により日常生活にどのくらいの支障が出ているのか?』というものです」

そこまで説明した筆者は、母親から長男の日常生活の様子も大まかに伺ってみることにしました。

長男は17歳ごろから昼夜逆転の生活がひどくなってしまい、起床は昼を過ぎてから。時には夕方ごろに起きてくることもあるそうです。食事は1日に1回で量はかなり少なめ。ご飯をお茶碗に半分、おかずと汁物を2~3口取るだけ。

自室の掃除をすることもなく、カーテンすら開けません。電気もつけずに、薄暗い部屋の中で一日のほとんどを過ごしています。窓を開けて換気もしないため、室内には湿気が多く、壁やカーテンにカビが生えてしまったこともあったそうです。そのようなこともあり、長男の部屋の掃除は母親が月に1回程度しています。

入浴をする気力も湧かず、1週間に1~2回シャワーを浴びればよい方。冬場は1カ月以上シャワーすら浴びないこともあります。

外出することはほとんどなく、月に1回の通院は母親に付き添ってもらわないとできません。日常生活に必要なものは、すべて母親に買ってきてもらっています。

ATMを操作したこともないので、銀行やコンビニでお金を引き出すことは難しい。まして、長男が一人で役所などに行き、窓口で説明を受けて手続きをするなんてとてもできないということでした。

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写真=iStock.com/winhorse
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