「韓国は神で日本はサタン」異端の善悪二元論

キリスト教のなかに生まれてきた善悪二元論は、異端というレッテルをはられ、排除されてきた。悪名高い異端審問なども、そうした異端を撲滅するための試みだった。

アウグスティヌスの流れを汲む現在のカトリック教会からすれば、神とサタンの対立で世界を説明しようとする旧統一教会は異端になる。だが、旧統一教会はカトリック教会に属しているわけではないので、異端として処罰されることはない。

霊感商法と書かれた見出し
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さらに旧統一教会では、韓国と日本の国家を、神側とサタン側に分ける。韓国は神側のアダム国家で、日本はサタン側のエバ国家だというのだ。韓国と近い日本は、本来なら韓国を助けるべきだったのに、植民地化し、韓国を破壊した。日本国民はその罪をあがなわなければならない。原罪と贖罪しょくざいの強調も、アウグスティヌスが説いたところだが、旧統一教会はそれを日韓の国家間の関係に応用し、日本人から霊感商法で金を巻き上げ、高額献金を強制することを正当化するために活用してきたのだ。

キリスト教の聖書
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信者は特殊な前提を絶対の真理だと捉える

このように、統一教会の論理は特殊である。キリスト教の影響が色濃く、その教義を独自に解釈しているが、反共の思想も、そうした宗教的な教えと密接不可分の関係にある。そして、文はメシアとして信仰の対象になっている。

島田裕巳『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)
島田裕巳『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)

ただ、文は2012年に亡くなっている。その後を、妻の韓鶴子が継いだが、信者は文が亡くなった後も霊界で活動していると信じている。旧統一教会の関連団体が行ったイベントは、霊界にある文の働きによるものとされ、その成功は、神側がサタン側に勝利した証拠としてとらえられているのである。

一般の人間は、旧統一教会の言うサタンなどは存在せず、世界の出来事が神の側とサタンの側の対立によって起こっているとは考えない。そうした見方を知ったとしても、常識から逸脱しており、到底認められないと考えるであろう。

それぞれの宗教には特殊な前提があり、信者はそれを信じ、絶対の真理だととらえているが、信仰を共有しない人間は、そこに普遍性を認めたりはしない。

その点で、旧統一教会の政治戦略というものは、一種の幻想であるとも言える。