見るべきところは「所得制限の有無」だけではない
「子ども手当の所得制限撤廃」も、まさにそういう話である。
民主党政権が子ども手当の制度に込めた基本理念を共有することなく、岸田政権が単に表面だけで「所得制限撤廃」の部分だけ民主党政権をつまみ食いしても、正直言って何の意味もない。それこそ「統一地方選を乗り切るための一時的なバラマキ」に過ぎない。
選挙が終わってほとぼりが冷めた後、岸田政権が熱を入れる防衛費増額問題で財源が見つからない、ということになれば、すぐに「所得制限を再び導入し、浮いた財源を防衛費に」という話が噴出するはずだ。
この問題は今後も国会で議論が続くだろうが、私たちが注視すべきはそういうことである。所得制限撤廃が実現するか否か、だけでなく、背景にある自民党の政治理念がどこにあるのか、結局は自分たちが後生大事にしてきた「第一義的には子どもは家庭で育てる」という理念に、いまだしがみついているのかいないのか、そういう点を見極めることだ。
質問する野党の側も、単に「政府が過去を反省して自分たちの政策を受け入れてくれたらありがたい」というだけで安易に納得せず、こうした点をしっかりとあぶり出す質疑を期待したい。それこそが「目指すべき社会像」について論戦を戦わせる、与野党二大政治勢力による国会質疑のあるべき姿である。