一方、現役世代はあまりカロリーを消費しなくなった
高齢者は退職後の者が多く、もともと身体を動かす必要が非高齢者より少なく、消費カロリーも多くなかったので、摂取カロリーも少なかった。だが、近年は非高齢者も高齢者と同じようにあまりカロリーを消費しなくなったので、両者は近づいてきたという要因が考えられよう。
さらに、高齢者の労働力率は2005年前後に低下から上昇に転じている(図表1)。また、自宅外で過ごす高齢者も増えた(図表3)。働く高齢者、活動的な高齢者が増えて消費カロリーが増えたので、両者の乖離が狭まったというのがもう1つの要因であろう。
なお、高齢者の摂取カロリーが大きく上昇に転じたというのは、いくら何でもありえないのであり、データには統計上のみせかけの要素も混じっているかもしれないという点を付記しておく。というのは、年齢別の摂取カロリーは、世帯の食事内容を世帯員各人に割り振るという方式で集計されているのであるが、高齢者が暮らす世帯はますます3世代世帯が少なくなり、2人世帯や単独世帯が増えていて、食品ロス率が上昇している可能性が高いからである。
図表5には入手した食品のうち食べ残しや廃棄などで生じる食品ロスの割合を少し調査年次は古いが食事管理者(食事を作る人)の年齢別に示した。高齢世帯では食品ロス率が大きいことがうかがえる。
国民健康・栄養調査におけるカロリー計算は、例えば料理に大根1本を使ったとしても、そのうち残したり廃棄したりする一定割合を引いて口に入るカロリーを計算しているわけであるが、その一定割合に関し少なくとも高齢者については過小評価の程度が年々高まっている可能性があるのである。
この記事のテーマからははずれるが、図表4で成長期である1~19歳の摂取カロリーが年齢計や20~59歳と同じように減少傾向にあり、最近も下落が続いている点も興味深い。カロリーというよりたんぱく質やビタミンなどが充実してきたのでこれで十分なのかもしれない。ゲームやネット時間などインドアでの時間が増え、外で遊ばなくなってあまりお腹がすかないのかもしれない。