東日本は野菜好き・麺好きだが、西日本は肉好き・パン好き。統計データ分析家の本川裕さんが過去3年間の家計調査を基に分析したところ、「肉か魚か野菜か」「米かパンか麺か」という地域における食の嗜好の差が明らかに。特に面白いのは、うどん・そば、ラーメン、パスタ、インスタント麺と種類の多い麺の好みの違いだった――。

日本全国地域によって全く異なる食の嗜好マップ

ギョーザ日本一をめぐる宇都宮、浜松、宮崎の競い合いなど、家計調査の地域データに基づいた話題がメディアやネットを騒がせることが多い。しかし、家計調査データの加工の工夫によっては、食べもの単品の消費が多いか少ないかというよりは、もう少し大局的な日本人の地域的な食の好みの傾向を明らかにできる。

そこで、今回は、最近の家計調査データを使って、肉か魚か、あるいはコメかパンか麺かといった食品間の嗜好の違いを地域別にあきらかにした全国分布マップを見ていただこう。

われわれの食の好みに関する分類として、肉好きか魚好きか野菜好きかという区分があるだろう。最初に、地域ごとに、いずれの好みが優先的かを家計調査の生鮮肉、生鮮魚介、生鮮野菜の支出額データから探ってみよう。

家計調査によると年間支出金額(2020~22年平均)は、全国平均で、生鮮肉が7万8000円、生鮮魚介が4万2000円、生鮮野菜が7万2000円となっている。

従っていずれの金額が多いかで地域を区分すると魚好きの地域は少なくなってしまう。そこでここでの地域区分は、それぞれの品目の支出額の都道府県ランキングを算出し、最も順位の高い品目で各都道府県を区分するという方法を採った。なお、家計調査では県庁所在都市の値しか得られないので、それを都道府県の値と仮定している。

何らかの理由による単年の変動の影響を避けるため2020年~22年に3カ年平均の値を対象とし、以上のように区分した結果で色分けした分布図を図表1に掲げた。参考のため支出額の多いトップ10地域の表も付加しておいた。

描いた統計地図を見ると、基本的に、西日本は「肉好き」、東日本は「野菜好き」、東京、大阪という東西2大都市と半島的あるいは外洋に面するような漁業の盛んな地域は「魚好き」という地域傾向が明らかとなっている。

地域区分は、ほぼ、ひとかたまり、すなわち連坦しているが、隣接地域と異なる飛び地的な分布としては、山形の肉好き、東京、大阪の魚好き、島根、沖縄の野菜好きが目立っている。

山形は生鮮肉と生鮮野菜が同順なのでそれほどの肉好きでないが、豚肉好きが主流の東北の中では例外的に牛肉好きでもある点が影響し、肉好きに区分される結果となっている。

東京、大阪については、東西の首都ならではの高級品嗜好が影響していると想像される。

また、島根が野菜好き地域に区分されるのは、方言などで指摘されることが多い山陰と東北の類似性のためとも考えられる。沖縄は低い所得水準の影響もあって肉や魚の支出額がそう多くないせいであろう。