肉、魚、野菜の好みは地域によってどう変わるのか。統計データ分析家の本川裕さんが、2019~21年の家計調査を基にチェックすると、「ジャガイモの一大産地・北海道でさつまいもがよく食べられるなど意外な事実もわかった」という。一目でわかる味の好みの列島図表を紹介しよう――。

前編(肉、魚編)から続く。

東京圏「ねぎ、トマト」、京阪神「はくさい、なす」

肉や魚ほど明確ではないが、野菜の好みにも地域性が認められる。最後に、野菜の類別ごとに、まず葉菜類と果菜類、次に根菜類といも類について、それぞれ、図表1から図表4で野菜の好みの地域分布を見ていこう。

葉菜類として取り上げた4品目のうち、ねぎがもっとも古い奈良時代以前からの来歴を有しているのに対して、それ以外はキャベツを先頭にすべて明治、大正時代以降に普及した野菜である。はくさいは煮物、鍋物、漬物として米食に欠かすことのできない役割を果たしているので在来野菜に見えるが意外にも明治後期に中国から導入され大正時代に産地化した比較的新しい野菜である。

九条ネギに代表される「葉ねぎ」は主に西日本で栽培され、千住ねぎに代表される「根深ねぎ」は東日本で土寄せして栽培され、中京地区ではその中間の越津ネギが栽培されている。ねぎ好きの地域は関東から中京圏までつながって分布している(静岡はキャベツとねぎはともに支出額全国1位であり、表の順でキャベツに色分けされているがねぎ好き地域と言ってもよい)。この地域は日本の中で生産量も多い地域である。

一方、ねぎ好き地域の北側はほうれんそう好きの地域が多く、関西地方ははくさい好き、九州はキャベツ好きの地域となっている。関西地方のはくさい好きは、日本にはくさいが伝来する前から、「しろ菜」、「天満菜」と呼ばれるはくさいに似た野菜が関西で食べられていたからという説や関西人は鍋好きだからという説などがあるが、はくさい好きの地域は、パン好き、牛肉好きと重なっており、単純に関西人は舶来もの好きだからとも考えられる。

【図表2】(根菜類)だいこん、にんじん、たまねぎ

インド原産のなすは奈良時代以前に日本に渡来した野菜であり古くから全国に普及していた。このため、ねぎと同じように、地方品種が多く、長なす(九州、東北)、丸なす(北陸、東北南部)、卵型小型なす(関東)、中長なす(関西)と現在でも野菜の中では地方色が濃く残っている。

中国から平安時代以前に渡来したきゅうりも古い野菜であるが、盛んに用いられるようになったのは明治・大正以降であり、特に戦後食生活の洋風化にともなってサラダ野菜として不可欠のものとなった。南米アンデス原産で大航海時代以降に世界に広まったトマトも戦後にビタミンを多く含む重要な保健食品として大きく躍進した英語名の野菜である。

三大都市圏や北陸・西南暖地ではトマトが好まれており、東北・北関東・中央高地はきゅうり好み地域となっている。大都市圏の中でも歴史が最も古い京都、奈良は、なす好き地域である点に古代野菜なすの面目がうかがわれる。