沿線でコンテンツをいかに作れるか
単に「オラが街の自慢」ではなく「他の街と比べてどう優れている(面白い)のか?」の相対評価やストーリー編集が必要だ。
ひとつの駅だけで全てを賄うことは困難なので、複数の駅での連携も不可欠だ。沿線全体という大商圏ではなく、駅ごとという小商圏でもない、2~3駅をグループ化した中商圏で、街の個性と施設機能の再編が求められるようになると考える。
これまで鉄道会社にとって「沿線住民」は、都心通勤を前提に住むだけの「マーケット的存在」と認識していたのではないだろうか。そしてマーケットのニーズに沿った、生活利便サービスを提供することが価値向上につながったのだ。
著者が参加する社団法人の研究会でも、本稿での各種課題に応えるべく街づくりソフトの努力や工夫が反映できる評価指標が欲しいというニーズに応え「街(駅)単位」を評価の対象として、街づくりのカルテとなる「エリアクオリア指標」を開発している。
都心通勤という前提が崩壊したコロナ後の世界では、「人・駅・沿線のコンテンツ化」という認識が必要になる。そこで生活する人たちは「プレイヤー」で、街をネタや舞台にして趣味や興味を「コンテンツ」として花開かせ、駅でつどい交流すると見立てる必要がある。
各々の駅や街のコンテンツ・ストーリーの振幅が、大きいほど魅力的な沿線になるわけだ。
これからの街づくりに必要なこと
これからは都心通勤を前提にしたベッドタウンの送迎拠点ではなく、自立した生活圏の中核になる「プチ目的地」として、駅機能の見直しが不可欠になる。
さらには、自由時間を生き生きと過ごす人たちに向けた遊動創発のために、沿線魅力の発掘・編集との両輪による沿線価値戦略が必要だ。
次世代の沿線価値戦略には、単にマーケットとしてだけではなく、ライフスタイル開発からの街づくり、魅力づくりが根本的に必要とされているのだ。