これからはどんな街が人気になるのか。都市開発プランナーの松岡一久さんは「私は小田急線座間駅前のホシノタニ団地に注目している。都心アクセスに依存した再開発と異なり、自立した生活圏を築き始めている。コロナ禍を経て、こうした街づくりはより増えていくだろう」という――。
ホシノタニ団地と1階にできた「喫茶ランドリー」
画像提供=株式会社グランドレベル
ホシノタニ団地の1階にできた「喫茶ランドリー」

シモキタ再開発に注目が集まっているワケ

街づくり関係者の間で、注目を集めているのが「下北線路街」だ。

下北線路街は、小田急電鉄が、東北沢駅から世田谷代田駅までの、路線地下化に伴い整備された約1.7kmにわたる複合商業施設の総称だ。従来の沿線開発とは一線を画す開発スタンスが高い評価を得ている。

広場やイベントスペース、個性的な個店やテラスハウス風店舗、さらには温浴宿泊施設まで、「さまざまな路面店スタイルの施設が点在」していて、下北沢らしく回遊を楽しめる。

開発プロセスにおいて、小田急電鉄は「支援型開発」というスタンスをとり、地元の商店連合会をはじめとする、街づくりに積極的な住民と何度も会議を重ねて、計画に反映していったという。

いままでの沿線開発とはまったく違う

もうひとつ注目されているのが「中央線コミュニティデザイン」だ。こちらはJR東日本のグループ会社で、主に三鷹以西の中央線の駅ビル・駅ナカ商業施設・高架下事業の開発・運営に加えて、沿線の駅業務を受託するなど、当該エリアに関する「一括運営」を担っている会社だ。

これまで地元との「距離」があった巨大企業が、地元ニーズにきめ細かく対応し、学生向け食事付き賃貸住宅や、プログラミング教室も開発・運営している。

さらに沿線のビールフェスティバルと連携した「クラフトビールの開発」や、ものづくり活動の支援など、地域のスモールビジネスを共創していくスタンスで、沿線価値の向上を図っている。

両方の事例から見えてくるのが、従来の「沿線開発」とは異なる、「沿線価値向上」の試みだ。