「腕がパンパンできつい」は「筋肉が喜んでいる」

つらいと楽しいは紙一重のところがあります。

そういうと極端に聞こえるかもしれませんが、つらいことをつらいと思わなくなるようにはできます。発想の転換です。

体操でいえば、つり輪の練習はかなりつらい。静止技は、試合では2秒止めればいいのに、練習では10秒止めることを3回やったりします。そうすると3回目には腕がパンパンになり、力が入れられないくらいになります。

だけどそこで、「腕がパンパンできつい」といった表現を使わないようにします。そういうときには「筋肉が喜んでいる」と言うようにするのです(笑)。

少し極端なようですが言葉を変えただけで、成長してるぞ! と感じやすくなり、楽しくなってきます。

言霊ことだまのようなもので、楽しいと口にすれば楽しいし、つらいと口にすればますますつらくなってしまう。

だからこそ僕は、つらい、苦しいといった言葉は口にしないようにしています。

困難に立ち向かったり、難しいことをマスターしようとしたりする際に「なんで、できないんだろう?」と悩む人は多いと思います。

そういうときにも「できないのが普通のこと」、「すぐにできたらおもしろくない」という考え方をすればいいのです。

その発想でいれば、できない理由を自分で考え、正解にたどり着くこともできます。実際のところ、すぐにできるようなことなんてつまらないものです。

簡単にできることは飽きるのも早く、すぐにおもしろくなくなります。

つらいと感じることが目の前にあるのはむしろ幸せなのだと思っていいはずです。

集中モードに入る2つのルーティーン

物事を成し遂げるには集中力が必要になります。試合に臨む際は、競技にのみ集中するモードに入ります。

僕が重要だと考えているのは“目力”です。

目をカッと見開くことで、モードを切り替えられる。鉄棒ではとくに一度離したバーをまたキャッチしたりするので、目から得る情報が大切になります。感覚としては、目が脳だと思ってやっているのにも近い。

そのため、演技に入る前にまず目に力を入れるわけです。

僕だけの感覚かもしれませんが、目を見開く意味はかなり大きい。寝起きで目がぼやけているときに集中できないのは当然だとしても、いつもよりカッと目を開けられる感じがするときは、試合でもいい結果に結びつきやすい気がします。

それで僕は、演技に入る前に目を見開くようにしています。

演技前に目を閉じる人もいるし、そのあたりは人それぞれです。自分でいちばんいい方法を見つけられたなら、それがいちばんのはずです。

もうひとつは、やはり深呼吸です。

意識的に、ふうっと力強く息を吐き出すと、スイッチが入ります。一般的には息を吸うと交感神経が優位になって緊張状態になり、息を吐くと副交感神経が優位になってリラックス状態になるといわれます。