勝負をかけた時、全力を尽くした時のミスを恐れない
――確かにサッカーにミスはつきものですが、仕事の場合、どんなミスでもOKというわけにはいきませんよね。
【村井】まあミスにも種類があって。うっかり提出期限内に書類を出すのを忘れてしまったとか、そういうミスを何回も繰り返すとか。これはルール違反だったり怠慢だったりするので、新たな世界にリスクを冒してチャレンジした上でのミスとはレイヤーが違いますね。
PDMCAで定義しているミスとは「自分にとって本当に勝負をかけた時、全力を尽くした時のミス」を指します。われわれ役員は商法上も公益法人法上も善管注意義務というのがあって、結果責任を負わなくてはいけない立場にあります。それでも現代の経営はリスクをとった経営をしなければいけない。まして社員はそこまで求められないので、どんどんチャレンジしていい。サッカーの生業の本質がミスなのにJリーグの職員がミスを恐れていては始まらない。そんな話を何回もしました。
他人の真似ではなく、自分事としてやってみる
それでチャレンジするとやっぱりミスをするわけです。DAZNさんと契約して「全試合配信」という壁に挑んだけど、開幕のガンバ戦で画面の中央に小さな丸がクルクル回って試合が中継されなかったとか。それまで休日開催が当たり前だったところで「フライデーナイトJリーグ」という未開の分野にチャレンジしたのですが、当初全クラブ反対の中で意志を通してきたとか。そういうミスやミスの可能性と常に闘いながらJリーグの職員は成長してきたのかな、と思います。
ナレッジの共有とかベストプラクティスとか横展開とか言いますけど、結局、他人の真似だけで、自分事としてやってみないと身に染みてはわからない。ネットで1000試合配信とか、「反動蹴速迅砲」のユーチューブ配信とか、コロナ禍での有観客試合とか。全部、チャレンジして、その度に痛い思いをして、そこから立ち上がる。それがサッカーを生業とするJリーグの在り方ではないかと思うのです。
失敗は怖いです。失敗するといろんなことを言われます。でもそうした批判の一つひとつに対して改善をしていくことが大事です。現Jリーグチェアマンの野々村芳和さんは、Jリーグをさらに成長していくために懸命に頑張ってくれています。時には、私のやり方を否定してもいいのです。組織がその可動域を広げていくには振り子が大きく振れたほうがいいのだと思います。