どうやら高いようにみえる中国の感染率からは、拡散のスピードが速く、比較的軽症なオミクロン株による感染が主流であることがうかがえる。
政府が制限緩和を発表する前に、感染抑制のシステムが崩壊していた可能性も高い。
北京では制限緩和の前から、市民による感染報告があふれていた。実際には政府は既に正式な発表数よりもはるかに多くの感染者数を把握しており、ゼロコロナ政策の廃止は避けられなくなっていたのかもしれない。
今のところ、中国の医療制度は感染拡大に対応できているようだ。だが北京では救急車の出動要請が通常の6倍に増えており、病院は患者が殺到することを恐れている。
香港の著名ウイルス学者は、いずれ医療施設のスタッフも体調を崩すようになり、今の状況は長続きしないだろうと指摘している。
中国政府は、最近の「反ゼロコロナ」抗議デモによる政治的ショックと、感染急拡大の両方に動揺している可能性が高い。しかし現在は、大した対策を用意しているようにはみえない。
だからこそ当局は、「全て順調」と主張する従来のやり方に戻ったのだろう。
これから政府は国の経済成長を促すため、体調が悪くても仕事に行くよう国民に圧力をかける可能性さえある。
今のところ政府は感染者の報告数を最小限に抑え、さらに時おり新たな医療対策を打ち出すことで、今回の感染の波を乗り切ろうとしているらしい。
ワクチン接種も対策の1つだ。12月14日には、感染リスクが高い人や高齢者を対象に2回目のブースター接種を開始すると発表した。
だが、コロナによる死亡率を大きく減らすほどの人数が接種を受けられる可能性は低い。
抗ウイルス薬のパクスロビドも、依然として入手困難だ。中国本土に住む市民には、mRNAワクチンの接種を受けるため、マカオへの渡航を計画している人も少なくない。
今回の感染拡大のスピードは、ロックダウン(都市封鎖)など以前からの対策に今から引き返しても手遅れであることを示している。
仮に政府がゼロコロナ政策の復活を考えて始めており、それによって引き起こされる国民の怒りを抑え込めると考えていたとしても、現実の明らかな感染急拡大は抑制可能な段階を超えている。