<ゼロコロナ政策を廃止し、今度は「自己責任論」を説き始めた中国政府。デモと感染の拡大に習近平は動揺している可能性が高く、今のところ打つ手はない:ジェームズ・パーマー>
マスクをした中国の人々
写真=iStock.com/Robert Way
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中国が「ゼロコロナ政策」を事実上廃止してからまだ間がないというのに、北京などの主要都市では新型コロナウイルスの感染が急拡大している。

SNSには感染の報告が次々と投稿され、従業員の9割が感染しているという企業もある。

それでも中国のメディアは、感染拡大をほとんど報じていない。夜のテレビニュース番組でも、新型コロナについては「全て適切に対処されている」と短く扱われる程度だ。

政府は「自己責任論」も説き始めた。最近のスローガンは「健康は自分で管理」。これまでゼロコロナは自分たちの功績だと吹聴してきたのに、今はその失敗の責任を負いたくないと考えている。

皮肉な話だが、政府が各種規制を緩和している今も、北京市民は以前からの厳しい制限を守っている。

人々が感染を恐れて自宅に引き籠もっているために街は閑散としており、食料品店の棚は買いだめのせいで空っぽだ。

公式発表の感染者数は、もはや現実を反映していない。制限緩和後の1週間、政府発表の数字は減少の一途をたどった。

これについて政府は、一斉検査を廃止したために無症状の感染者数が報告されなくなったことを、減少の要因として認めている(中国の定義では入院に至らない軽症者も無症状者に含まれる)。

中国では感染者の追跡に当たって一斉検査以外の手段(例えば自己申告)を採用していないため、今後も公式の感染者数は少ないままだろう。政府の発表によれば制限緩和以降、新型コロナによる死者は1人も出ていないという。

政府の公衆衛生専門家は、新型コロナが深刻なウイルスではないことを強調している。

今のところ実際の感染者数は、ネット上に流れる事例報告などを基に推測するしかない。SNSには、地元コミュニティーに大勢の感染者が出たとする投稿があふれている。

救急車の要請が6倍に

筆者の北京在住の知人を見渡しても、ここ1週間ほどでざっと10人に4人が新たに感染した。これは自宅に持っていた家庭用キットで検査した結果だ。

ネット上の非公式な調査によれば、北京市民の58%以上が陽性だと自己申告している。

北京ほどではないが、上海など他の大都市でも感染が急拡大している。

自宅検査用キットの備蓄が尽き、政府による検査も受けにくくなったなか、多くの中国人は発熱や咳の症状が出ても、季節柄流行しているインフルエンザかコロナかを判断できず、推測に頼るしかない。