免疫細胞が機能していればがん細胞は破壊される

そもそも僕たちの体の中には毎日5000~1万個のがん細胞が出現しています。しかしそれらの細胞が増殖することはありません。未熟な細胞であるために自ら増殖がストップして細胞死する、または免疫細胞に処理されるためです。

検診で発見するためには少なくとも1cm程度の大きさになることが必要です。その大きさになるためには、10年から20年の年月を要します。免疫細胞がその能力を適切に発揮していれば、その細胞はことごとく壊され、がん細胞は増殖することはできません。がん細胞が免疫細胞の網の目をかいくぐって増殖したということは、10年から20年免疫機能が低下している状態が続いていたということになります。

筋トレをすることで得られる効果は全身の慢性炎症の改善です。筋肉は動かせば動かすほど筋肉からミオカイン(myokine)と呼ばれるサイトカイン(細胞間の伝達物質)を放出します。このミオカインには炎症を抑える物質が含まれており、筋トレを繰り返すことで全身の炎症が改善していきます。

がんは体の中に慢性炎症が持続することによって発生します。全身の炎症が起これば筋肉はどんどん退縮していきます。僕がおなかの手術をした多くのがん患者さんの筋肉が萎縮していたのは、慢性炎症の結果だったのです。

がんを予防するためには慢性炎症を改善することです。そのためにはまず、良い食習慣を形成することが重要です。しかしそれだけでは十分ではありません。筋トレをして筋肉自身から出る抗炎症物質を使って全身の炎症を改善することも併せて必要です。

いきなりジムやジョギングでは続かない

一般に運動というと最初に思いつくのはジョギングやジムへ入会することだと思います。しかしジョギングは毎回30分以上かかりますし、その都度着替えてランニングシューズを履かなくてはいけません。ジムで運動するには往復ジムまで移動する必要があります。

ジョギング
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ジョギングを開始しても80%以上の人は3カ月継続することができません。ジムも1年の継続率は5%以下です。長期的に継続できるようにするために、運動を始める時は、わざわざ着替える必要がなく、運動に出かけなくてもいいように自宅での筋トレからスタートすることが重要です。

今まで運動習慣がない人が身につけるためには、習慣化のための作戦が必要です。どんなに忙しくても1日のうちに必ず、できれば同じ時間にその行動を行うこと。心理的な抵抗があるうちは決して負荷を増やさないことです。